話題の歌姫・安斉かれんが「ポスギャル」といわれる理由
音楽をこよなく愛する、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。【音楽通信】第13回目に登場するのは、「ポストミレ二アルギャル」と呼ばれる次世代型ギャルで、今年5月にデビューしたばかりのシンガー、安斉かれんさん!
ザ・ローリング・ストーンズのライブで触発される
【音楽通信】vol.13
渋谷のショップで店員として働きながら、デビュー前からコスメティックブランド『M・A・C』の店頭コレクションビジュアルに抜擢され、注目を集めていた安斉かれんさん。
令和元日となる5月1日にデビューし、10月1日にはデジタル3rdシングル「人生は戦場だ」を配信した、20歳になったばかりの安斉さんにお話をうかがいました。
ーー音楽に興味を持ちはじめたきっかけを教えてください。
幼いころからエレクトーンを習っていたり、父がドライブ中にロックをよくかけていたので、自然と音楽、特に洋楽にも興味を抱き始めたんです。
父にザ・ローリング・ストーンズのライブに連れていってもらったのが人生初のライブで、そのバックバンドの人がアルトサックスを吹く姿を見て、ものすごく憧れました。
中学に入ってからは、吹奏楽部でアルトサックスを始めて、ずっと楽器に対する興味が強かったんですが、あるとき「喉もひとつの楽器だな」と思うようになって、歌も始めるようになりました。
ーーライブではボーカルに注目しがちですが、バックのプレイヤーに目を留めたというのは、小学生ながら着眼点がすごいですね。
父が家でずっと趣味のギターを弾いていることが多かったので、興味がわくのは自然と楽器ばかりでしたね。
ーー中学生からサックスを始めたのですね。
はい。もともとはジャズをやりたかったんですが、吹奏楽部に入ってみたらクラシックでした(笑)。でも、クラシックもそれはそれで楽しいなと思って。
ーー楽器にふれていくなかで、「喉もひとつの楽器」だと気づいたということですが、それからは歌うことも意識して行っていったのですか。
意識というほどではなく、「ちょっと歌をやってみようかな」というくらいの感覚です。私はもともと洋楽やロックを聴くことが多かったのですが、最近はJ-POPにもすっかりハマり、いまもいろいろと聴いています。
ーー昔もいまも、どんなアーティストの曲を聴くことが多いですか。
実家ではローリング・ストーンズやグリース・ヘルメットをよく聴いていましたし、いま自分で聴くのはアデルやアリシア・キーズなどの女性ボーカルの曲が多いですね。
15歳ごろから歌と作詞を始める
ーー今年、5月1日にデジタル・シングル「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」が配信され、デビューされました。高校生になってから音楽のレッスンに励んでいたそうですが、やはりデビューすることを目指していたのですか。
音楽が好きでレッスンしていただけで、デビューしたい気持ちはなかったんですが、レッスンに通うなかでいろいろなご縁があって、デビューすることになりました。人生に起きることは、すべて意味があって、その先に縁が繋がるものなんだなって。
ーーデビューしてから、心境の変化はありましたか。
デビューする前もした後も、全然実感がわきませんでした。とりあえず目の前のことを懸命にやってきたという感じです。「もうやるしかない!」という心境。ようやく実感がわいてきましたね。
ーーデビューすることに対してのプレッシャーはなかったのでしょうか。
プレッシャーはもちろんありました。「大丈夫かな?」と不安になったこともあります。いまもそれはありますが、何を始めるにしても、プレッシャーはあると思うので、ただ目の前のことを一生懸命するだけです。
ーーまわりの方の反響はいかがでしたか。
友達にも「音楽をやっている」「芸能をやっている」とは言っていなかったので、みんなびっくりしていました。デビューした瞬間に「え! 音楽やってたの」って(笑)。
ーーそうだったのですね(笑)。ところで、安斉さんはご自身で作詞もされていますね。デビュー作は16歳のときに書いた歌詞だそうですが、何歳頃から作詞を始めたのですか。
作詞も、歌を始めたのも、15歳の頃からです。歌詞は、思ったことをメモに書き留めるようにしていて、そこから作っています。
ーー続く2枚目は、7月1日に「誰かの来世の夢でもいい」が配信されました。1枚目も2枚目も、配信後にタワーレコード限定の無料配布となった8cmシングルがリリースされていますが、平成生まれの安斉さんは、90年代にあった8cmのCDシングルはご存知なかったですよね。
そうですね。もしかしたら父が持っていたかなあ、ちらっと見たことはあったかも? 8cmシングル、ちっちゃくて、かわいいです。逆に、新しいですよね。
ーー渋谷のショップで店員として働いていたのは、ファッションがお好きだったからなのですか。
渋谷のお店で働いていましたし、ファッションについて知ることも好きではありましたが、アパレルの仕事がしたいというよりも、個性的なものだったり、人とかぶらないものだったり、そういうオリジナリティのあるものに囲まれる仕事に携わりたい! という思いのほうが強かったです。
ーー次世代型ギャルである「ポストミレニアルギャル」(通称ポスギャル)と呼ばれていますが、そのことについては?
大前提としてギャルとは、「うちら、ギャル~」みたいなノリや着飾った見た目だけじゃなく、マインドだと思っています。そういう意味では、(表面上でポスギャルを意識しているわけではないけれど、マインドは)自分もギャルだと思います。
ーーデビュー前から『M・A・C』の店頭コレクションビジュアルにも抜擢されていましたが、そのときの心境を教えてください。
実はコスメがすごく好きで、もともと『M・A・C』を愛用していたので、お話をいただいたときはすごくうれしかったです。とくに海外のコスメが好きで、日本に入っていないものを取り寄せたりしています。
メイクの仕方によって、雰囲気が全然変わってくるじゃないですか。そこがメイクの面白いところで、またさらに、メイクの勉強もがんばろうと思っています。
ーーメイクに興味を持ったのはいつですか。
メイクを始めたのが小5ぐらいですね(笑)。そのときに人気だったギャル雑誌に憧れて、友達とつけまつげを買いにいって、つけまつげをし始めました。それがきっかけで、メイクもするようになったんです。楽しかったですね。
ーー今日はメイクさんがメイクをされているのですか。
今日は自分でメイクをしています。恥ずかしいな(笑)。
ーーとても透明感のあるお肌ですが、ファンデーションを塗っていますか。
いえ、今日は塗っていないです。がっつりメイク顔になるのでファンデーションはせずに、パウダーだけにしています。パウダーの下に、『M・A・C』の「ストロボクリーム(光沢のある下地クリーム)」を入れると、ベースから輝いてきれいに見えるんですよ。
ーーそういうコツもあるんですね。
いえいえ、自己流なんです(笑)。ありがとうございます。
ーーメイクのこだわりはありますか。
目もとのメイクは日によって、すごく変えてしまいます。あと、ハイライトの入れ方と、ベースではファンデーションを塗らないようにしていますね。
自分に正直に、リアルタイムの気持ちを歌詞にする
ーー10月1日に3枚目のシングル「人生は戦場だ」を配信され、こちらも1、2枚目と同様にタワーレコード限定の無料配布となる8cmシングルとしてリリースされました。新曲に込めた思いを教えてください。
いつもは書きためたメモから、ひとつの歌詞にしていくのですが、「人生は戦場だ」に関しては違いました。曲をいただいたときに、曲からのインスピレーションを受けて、一気に感情があふれて歌詞を書き上げたんです。
すごく静かなメロディから1番が始まって、2番からどんどん盛り上がるのですが、1番の音がささやきのように聴こえたから、“人には言わないけれど自分の心の中を語る歌詞”にしました。そして2番では、展開の盛り上がりに合わせて、“少しずつ強くなって決意をしていく気持ち”を歌詞にしてみたんです。
ーー一気に歌詞を書き上げたということですが、1枚目と2枚目のときを振り返るとどうでしょうか。
1枚目のときは歌詞を書くことにまだ慣れていなかったので、いま思えば、昔の日記を読むような感じになっています。言いたいことをぶわーっと並べていきましたね。
2枚目はそのときにしか思わない感情を書きためていたメモから引っ張ってきて、歌詞にしていったという感じでした。
ーー書きためたメモからストーリーを紡いでいくのも、だいぶ慣れてきたのでしょうか。
そうですね。毎日書いているので、メモもいっぱいたまりました。ひとこと、ふたこと、思いついたことや情景、そのときに見た風景をメモしています。良いことも悪いことも書いて、単語でもいいから残しておいて、そこから広げていきます。
ーーストレートにがんばろうという歌詞ではなく、さまざまなことに揺れて葛藤する気持ちを描いていらっしゃいますが、そこに共感する方も多いのではないかと思います。そのあたりは意識して歌詞を書いているのですか。
もちろん聴いてくれる方が共感してくれたら、すごくうれしいですね。でも歌詞を書くときは、人に共感してもらいたいというよりも、リアルタイムの気持ちを素直に書くほうが、絶対共感されると思っていて。この世代でしか思わない感情を、自分に正直に、リアルに書いていければと思っています。
ーー新曲がテレビアニメ『ブラッククローバー』(テレビ東京系 毎週火曜日午後6:25~)のエンディングテーマとして、10月から流れていますね。
大好きな作品のエンディング曲を歌わせていただいています。物語に添えて流れたときに、何か伝わることがあればうれしいですね。
ーーミュージックビデオでは、1枚目から今回の3枚目まで、「デビュー3部作」として一連の物語を描いています。AR(拡張現実)が進化して、高度なMR(複合現実)が実現した「近未来の渋谷」を舞台にした設定だそうですね。
そうなんです。3作でつながっているストーリーがあるので、細かく観ていただけたら、面白いと思います。
ーーミュージックビデオの撮影も初めてでしたよね。
はい。最初は「こんなにも大変なんだ」と驚きました。セットで撮ることもありますし、ロケに行くこともありますし、ブルーバックで撮影するときもありますし。とくにブルーバックでの演技は難しかったですね。
長い時間をかけてミュージックビデオを作り上げていくために、多くのスタッフやキャストの方と一丸となって作っていったので、完成版を見たときは本当にうれしかったですね。
最初は何もかもわからないまま撮っていたんですが、何作か撮るうえでいろいろと思うものが出てきました。今後、ミュージックビデオを撮るときは、少しずつ、自分自身のこだわりも強くなっていくのではないかと思います。
いろいろなことを吸収して「安斉かれん」を高めていく
ーー現在20歳になられて、10代の頃と比べて心境の変化はありましたか。
そうですね……特に何にも変わらないですね(笑)。お酒が飲めるようになったので、ひとりでバーにでも行ってみようかな。
ーー20代は「こうしていきたい」という考えはありますか。
先のことを考えるのはあまり好きじゃないんです。だから、常に目の前のことをやっていきます。
ーーところで、お休みの日はどのように過ごされていますか。
お休みの日は、おうちでずっと動画配信サイトで映画を観ています。歌詞につながると思うと勉強にもなりますし、映画がもともと好きなので映画やミュージックビデオなどをいろいろと観たり、愛犬と遊んだりしています。
ーーひとり暮らしだと、犬のお世話をするのは大変じゃないですか。
もともと実家に犬と猫、オウムやカメなど、いろいろな種類の動物がいたので、ひとりになると寂しいんです。ひとり暮らしの家でも、帰ったら動物なりの「おかえり」を言ってもらうことが、癒しになります。
いま飼っている犬はペキニーズとチワワのハーフなんですが、ちょっとブサカワなところが愛くるしいです(笑)。赤ちゃんのときから飼っていますが、まだ8か月なのに貫禄があるんですよ。お散歩にも毎日行きます。
ーーお名前はなんですか。
ゼロくんです(と言って、スマートフォンにあるゼロくんの写真を探す安斉さん)。かわいい写真を見てほしいんですよ……。この写真、見てください!
ーーかわいいですね! ではお休みの日は、映画を観たり、ゼロくんと遊んだり。
はい。あとは、友だちとごはんを食べに行ってゆっくりとカフェで語っています。
ーー最後に、シンガーとして今後の目標があれば教えてください。
目標というより、こうしていければという思いになるんですが、ずっといまのように、リアルタイムで気持ちを伝え続けていければ。そしてこれは前から言っていることでもあるんですが、いつまでも音楽を好きでいたいです!
これからも、いろいろなところからさまざまなものを吸収して、どんどん「安斉かれん」を高めていきたいと思います。
取材後記
ゼロくんのお話になると笑顔があふれる、キュートな安斉かれんさん。初ステージとなった、10月に開催された渋谷のイベントでは、凝った演出で観客を驚かせていました。そんな安斉さんが発信していく音楽やメイク、ファッションなどのスタイルは、これからの時代にどんな影響を与えていくのか見逃せません。まずはニューシングルをチェックしてみてくださいね。
安斉かれん PROFILE
1999年生まれ。神奈川県藤沢市出身。渋谷の人気ショップ 『RELECT by RUNWAY CHANNEL Lab.』で店員として働きながら、デビュー前から多くのファッションメディアに登場し、『M・A・C』の店頭コレクションビジュアルに抜擢される。
令和元日の5月1日に1stシングル「世界の全て敵に感じて孤独さえ愛していた」でデビュー。7月1日に2ndシングル「誰かの来世の夢でもいい」、10月1日に3rdシングル「人生は戦場だ」を配信。これらデビュー3部作は配信後に、8cmシングルとしてもリリースされた(タワーレコード限定無料配布)。
Information
安斉かれん
New Release
「人生は戦場だ」
10月1日配信
(サブスクリプション音楽ストリーミングサービス限定配信シングル)
オフィシャルサイト
https://kalenanzai.com/