大塚 愛「とても面白かった」新装アルバム&初配信ライブ映像作品を語る
【音楽通信】第68回目に登場するのは、デビュー17年目を超えて、シンガーソングライターとしての活動のほか、小説の執筆や絵本作家、楽曲提供などクリエイターとしてマルチな才能を発揮し続けている、大塚 愛さん!
【音楽通信】vol.68
ドラマ主題歌をよく聴いていたことが出発点
2003年にシングル「桃ノ花ビラ」でメジャーデビューし、同年リリースの2nd シングル「さくらんぼ」が大ヒットを記録した、大塚 愛さん。2019 年には、デビュー15 周年記念のオールタイムベストアルバム『愛 am BEST, too』をリリースしました。
2020 年には初めて短編小説を発表するなど、シンガーソングライターとしての活動のほか、イラストレーター、絵本作家、楽曲提供など、クリエイターとしてマルチな才能を発揮しています。
そんな大塚さんが、2021年2月3日にリメイクアルバム『犬塚 愛 One on One Collaboration』、アニバーサリーライブ「LOVE IS BORN ~17th Anniversary 2020~」のライブDVD/Blu-rayとライブCDを同日発売されるということで、お話をうかがいました。
ーーまず、大塚さんの音楽的なルーツやデビュー前によく聴いていた曲からお聞かせください。
私は基本的にドラマっ子なんです。そこが出発点なので、ドラマの主題歌になった音楽が常に身近にありましたね。初めて観たドラマは、確か『東京ラブストーリー』(フジテレビ系 1991年放送)なので、小田和正さんが歌う主題歌「ラブ・ストーリーは突然に」が特に印象的です。同じように、山下達郎さん、ユーミンさんなど、ドラマ主題歌になった曲をよく聴いていましたね。
ーー幼少時からピアノを習い、15歳からはご自身で作詞作曲を始めていますが、その後、アーティストになろうと決めたきっかけはなんですか。
就職活動がきっかけです。ずっと音楽制作は続けていたので、高校を卒業するときに音楽の学校に通うことも考えましたが、音楽だけを学んで将来の可能性を狭めてしまうのもイヤだなと。それよりも子どもと接したり、子どもの興味のあるものを学んだりしたほうがよっぽど世界が広がるのではと思ったことと、さらに音楽や表現についても学べる学校に行くことにして、進学した短大で幼稚園教諭などの資格も取りました。
そして就職活動をするときに、やっぱり音楽の道へ進みたいと思ったんです。実際にデビューできたのは、運がよかったとしか思えないですね(笑)。
ーー2020年を振り返ると世界的にコロナ禍となり、2021年の現在も日常生活に大きな変化が起こりました。音楽業界では、リリースやライブの延期といった状況もありましたが、大塚さんにとっても、音楽家としての想いの変化はありましたか。
コロナ禍になる少し前から、なぜかあまり暗い曲を聴きたい気分じゃなくなっていて、明るく楽しい曲を体が勝手に求めていたんです。その後、コロナ禍になってずっと家にいるという状態になったときに、家の中で楽しく過ごすには、アッパーな楽しい曲たちが気分を変えてくれることに気づきました。
たとえば、ちょっとした毎日の同じ動作をひとつするにしても、明るい曲を聴きながらだと、つい踊りながら作業をしてしまう。コロナ禍だからこそ、音楽に触れることによって得られる楽しさの重要性があるということをすごく感じましたね。
ーーコロナ禍になる少し前から明るい曲を求めるようになっていたのは、自然と何か察知するものがあったのでしょうか。
なんでしょうね? 自分のなかで自然に感じたモードだと思うんです。なぜか「アッパーでいきたい」という、そのときの自分をバックアップしてくれるものが欲しかったんでしょうね。
リメイクアルバムとライブ映像作品を同日リリース
ーー2021年2月3日に、多彩なジャンルの音楽プロデューサーやトラックメーカーの方がアレンジを手がけたリメイクアルバム『犬塚 愛 One on One Collaboration』をリリースされます。「金魚花火」や「さくらんぼ」ほか、新たな息吹が吹き込まれたリミックスサウンドとなっていますが、ご自身で聴かれてみていかがでしたか。
雰囲気がまったく変わったものから、もともと持っていた曲のテイストを残しつつ、また新たな可能性としてバージョンアップしたものまでありました。聴いていて、とても面白かったですね。
ーーバージョンアップして、とくに気になった曲は。
「黒毛和牛上塩タン焼680円」ですね。もともとセクシーな曲ですが、オリジナルは音が強い感じだったところ、今回はもうちょっと柔らかいエロスを表現して、実現させてくれたなと。(Rin音、空音などを手がける音楽プロデューサー)maeshima soshiさんが手がけていますが、オリジナルが持つ曲の方向性は変えず、バージョンアップした感じがありました。
ーージャケット写真のワンちゃんは大塚さんの愛犬だそうですが、タイトルの意味も教えてください。
今回のアルバムは、大塚 愛の楽曲がリメイクされた作品です。すでにある曲に“ひとつ何かが加わったことでの大塚 愛”を表現するために、新しい一手を加えてくださったプロデューサーの方をひとつとして考えて、「大塚 愛」の「大」にひとつ点をうつと「犬」なので「犬塚 愛」に。そして一対一という意味の「One on One」で、『犬塚 愛 One on One Collaboration』というタイトルになりました。
ーー先にいくつか配信されていた曲もありますが、ファンの方の反応はいかがでしたか。
こんなふうに曲が変わるという「ビックリした」という言葉もありましたし、「黒毛(黒毛和牛上塩タン焼680円)」みたいに、曲の雰囲気は変えずにバージョンアップしたものは「なじみやすかった」という反応も。それぞれの曲のリメイク加減に、幅の広さがあったんだと思います。
ーーリメイクアルバムのリリースと同じ2月3日に、2020年9月に開催された初オンラインライブ「LOVE IS BORN 〜17th Anniversary 2020〜」をパッケージ化したライブDVDとBlu-ray、ライブCDも発売されますね。初の無観客オンラインライブを行った心境からお聞かせください。
無観客ライブは、レコーディングの延長線上のような印象が強かったですね。レコーディングスタジオからの配信でしたし、エンジニアさん含めカメラマンさんも、いつものチームの人間しかいないという環境だったので、緊張せずにリラックスしてライブができました。
ーーオンラインライブだと、室内にたくさん置かれたどのカメラを見れば伝わるかといった、戸惑いはありませんでしたか。
それがありがたいことに、17年やらせていただいているなかで、多くのテレビ出演の経験をさせていただいています。カメラ慣れではないですが、複数のカメラがあるなかでどのカメラとアイコンタクトをするのか、どう見せていくとよいのか、カメラマンの人たちとのやりとりも経験上にあったので、やりにくさというのはまったく感じませんでした。
ーー有観客ライブと違って、無観客ライブで感じたことや、いつも目の前にいらっしゃったファンの方の存在について、あらためて感じたことはありますか。
初めてのオンラインライブでは、目の前にお客さんがいないので、いつもいただいていた歓声や掛け声はいかに大事だったかということに、気づかされましたね。昨年末には、最終的には中止となってしまったのですが、出演するはずだった有観客のライブイベントも予定していました。もし実施していたとしても、客席では大きい声は出しちゃいけないというルールもありましたから、「アッパーな曲はどうやってやるんだ?」と、初めて悩むところもありましたし、いつもライブができていた状況がいかにありがたかったか再認識しましたね。
ーー状況によっては、またオンラインライブを行う機会も増えるかもしれませんが、今後、配信ライブでやってみたいと思う企画はありますか。
CGとの融合でしょうか。もともと映像が見える曲作りや映像も重視しているので、映像と一緒に曲を伝えることが、自分のなかではベストなんです。これまで開催してきたようなステージで見せるライブでは実際にはなかなか作り込めないところもありますが、オンラインではガッツリと映像も作り込めるんじゃないかなと思うので、やってみたいですね。
ーー今回のリメイクアルバムや映像作品はどんなふうに観て、聴いてほしいですか。
基本的に音楽は、料理するのは聴く人だと思っているので、こちらが言葉で渡すものじゃないのかなと。それぞれの方が聴いて、感じて、心でどう捉えるかだと思うんですよ。こちらがたとえば「楽しい曲です」と言っても、聴く側が「すごく悲しい曲だな」と思ったら、それは悲しい曲になる。だから、みなさんの人生のなかで、ある一部分にすごくフィットして、その人の人生をより立体的にしてくれるのが、音楽の役目だと思っています。みなさんの生活に合わせて、楽しんでいただければいいなと思いますね。
ーー2021年2月14日からは、ピアノ弾き語りライブ「AIO PIANO vol.8」を全国3箇所のビルボードで開催されます。有観客ですし、いつもとは違った心境で臨むのではないでしょうか。
そうですね。状況を見つつ、一番ベストな判断をするという現状はつらいところではありますが、もし開催できたら、みんな苦しい中での久しぶりの息抜きとして来てくれるんじゃないかなと思っています。王道な曲から、ファンの人たちがマニアックに聴いてくれている曲まで、今回はコンセプチュアルにセットリストを組んでいます。
みなさんの現実にある葛藤や窮屈なところから、一気にロマンチックな世界へと精神を解放してあげたいという気持ちで、テーマを考えました。ロマンチックな世界へと、みなさんがつながればいいなと思っています。
幸せなものだけ取り入れて楽しく過ごしたい
ーー音楽活動以外のこともおたずねします。普段、日課としていることや趣味などはありますか。
以前から、英会話を習っています。ただ、先生が高齢なもので、コロナ禍になってからは危険だということで、レッスンがなくなってしまったんですよね。とはいえ、週に1度のレッスンだったので、やっぱり毎日英語を話さないと、実はあまり身にならないと感じていて。
するとコロナ禍になったので、英会話もオンラインで前進できないかなと思っていたら、DMMさんで毎日レッスンができると聞いたんです。実際に毎日通うとなると大変じゃないですか、子育てもありますし。それがオンライン授業だと、毎日自宅でレッスンを受けることができるというのはすごく大きいということで、DMMさんのところで毎日英会話を習っています。
ーーそれはまた海外で活動される準備や曲作りのためでしょうか。
けっこう前から、台湾や中国にも行かせていただくことが増えてきてはいたので、そうなったときにもちろんその国の言葉で話せるのがベストではあるのですが、パリにも行ってライブをやったりもしていて、さすがに何か国語も並行して覚えるのは難しいと(笑)。でもせめてMCのときに、もうちょっと会話ができたり、スタッフの方と会話ができたりすることの重要性を感じていました。
これからも、もしかしてもっと海外のいろいろな国に行かせていただくことがあるかもしれませんし、そのときのためにも英語ができたほうがいいと思って、レッスンしていますね。
ーー大塚さんは女の子を子育て中のママでもありますが、ファンの方やananwebの読者の方のなかには、同じように育児に奮闘する女性もいます。そこで、大塚さんの育児のコツや、家事育児とお仕事の両立で心がけていらっしゃることがあれば、お聞かせください。
正直なところ、どんなことでも両立するというのは、難しいことなんだと思っています。できているつもりでもどこかに負担がかかることもありますし、何かしらの助けがないと、ひとりで背負うのは難しいときもあるのかなと。そうなったときに、甘えられずに自分で自分の首を締めると、結果それがまた誰かに迷惑をかけることになるかもしれないので、私は基本、まわりに甘えていますね(笑)。なんだったら、子どもにも甘えています(笑)。
もちろん、育児は何が正解かわからないところもあるので、いちいち「これは合っているのか」「正しいのか」と考えているとやっていけないじゃないですか。何を選んだとしても、どちらにしても答えはわからないので、私の場合は「いま彼女を見てどんなふうに思ったか」で毎回、判断しています。彼女と話をしながら、お互いに、思っていることを言っていますね。
謝ることは謝って、お願いしたいところはお願いして、認めるところは認め合って、学べるところはお互いに学んでというふうに、けっして「私だけが子育てをしているんです!」という感覚ではないんです。娘と一緒に生きて、手を組んでやっている「チームプレイ」という感じ。だから、ひとりで背負いこむ子育てをするという感じは、まったくないですね。
ーーお子さんとも同じ目線に立って、対等に接している感じがしました。
そうですね、私が親だからといって偉いことはなくて、彼女のほうが物事をしっかり捉えていて、それでこちらが改めて気づかされることもたくさんあります。お互いに別の人間だからこそ、身体的にできるできないはあっても、「子ども」だとか「大人」だとかで、分けて考えることはないですね。基本的な人生のなかでの考えのものさしは、彼女は彼女で、自由に作っていってほしいなと思います。
ーー自立している賢いお子さんのようですね。
いえいえ、でもまだ甘えん坊なんですよ(笑)。普段、私はあまり話すほうではないのですが、彼女はずっとしゃべっているので、いつもそれを聞いているような親子です。
ーーママになってもずっとチャーミングな大塚さんですが、普段、美容などで気をつけていることはありますか。
いや、年々、老けていますよ(笑)。ただ、若いときは外面ばかり気にしていましたが、年齢を重ねるごとに、内面にも意識が向いています。内面から発するもので外側が作られていると思うので、幸せホルモンともいわれることのある「オキシトシン」をとにかく増やしたいなと(笑)。肌がきれいだった日に何があったかをいろいろと分析していった結果、オキシトシンが出ていたんじゃないかなと発見したんです(笑)。だから、内面からの輝きを大事にしたいですね。
ーー確かに心身の充実は大事ですね。では最後になりますが、今後の抱負を教えてください。
新曲を出していきたいと思っています。時期については……(スタッフさんに向かって)誰かタイアップを取ってきてくれ(笑)! もしくは『anan』の表紙がとれたらリリースするかもしれません(笑)!
ーーなるほど(笑)!
さらに『anan』でオキシトシンの特集があったらバッチリです(笑)。あとは健康でいることですね。とにかくストレスほど必要ないものはないので、心のなかに暗いものを溜めないこと。それが一番の健康だと思うんです。なので、とにかくストレスを溜めない、排出すること。肌もそうですし、すべてのことにおいて排出していくことの必要性があるので、「なんか溜まってるな」と感じたら、出す。たとえば、いかに泣けるかということに特化して涙で出してしまうとか、カラオケでとにかく声を出して発散する、汚いものや必要のないものは出しちゃう。そして幸せなもの、オキシトシンだけ取り入れて(笑)、楽しく過ごしたいと思っています。
取材後記
デビューの頃から、ママになった今もなお可憐な印象のままの大塚 愛さん。さまざまな分野で才能を発揮されていますが、シンガーソングライターとしても変わらず、わたしたちにすてきな歌を届けてくれています。そんな大塚さんのリメイクアルバムと初オンラインライブの映像作品、ライブCDをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。
取材、文・かわむらあみり
大塚 愛 PROFILE
1982年9月9日、大阪府出身。15 歳から作詞作曲を始め、2003年9月10日にシングル「桃ノ花ビラ」でメジャーデビュー。同年12 月17 日にリリースした2nd シングル「さくらんぼ」が大ヒット。2019 年1 月にデビュー15 周年記念オールタイムベストアルバム『愛 am BEST, too』をリリース。
2020 年3月、ライブでのピアノ弾き語り音源を集めたアルバム『Aio Piano Arioso』をリリース。シンガーソングライターとしての活動のほか、初めての短編小説『開けちゃいけないんだよ』を『小説現代』2020年9月号(講談社)に寄稿するなど、イラストレーター、絵本作家、楽曲提供など、クリエイターとしてマルチな才能を発揮し活動中。9 月、デビュー17 周年記念となる自身初のオンラインスタジオライブを行う。
2021年2月3日、リメイクアルバム『犬塚 愛 One on One Collaboration』、アニバーサリーライブ「LOVE IS BORN ~17th Anniversary 2020~」のライブDVD/Blu-ray及びライブCDを同日発売。
「AIO PIANO vol.8」と題したピアノ弾き語りツアーを2月14日 Billboard Live YOKOHAMA、2月20日 Billboard Live OSAKA、2月27日 Billboard Live TOKYOにて開催する(詳細は公式HPまで)。
Information
New Release
『犬塚 愛 One on One Collaboration』
(収録曲)
01.黒毛和牛上塩タン焼680円 (maeshima soshi Remix)
02.妄想チョップ (ケンモチヒデフミ Remix)
03.さくらんぼ (Kan Sano Remix)
04.金魚花火 (ANIMAL HACK Remix)
05.桃ノ花ビラ (mabanua Remix)
06.PEACH (Tomggg Remix)
07.SMILY (Lucky Kilimanjaro Remix)
08.君フェチ (春野 Remix)
09.Chime (AmPm Remix)
10.ユメクイ (SASUKE Remix)
2021年2月3日発売
AVCD-96640(CD)
¥2,000(税別)
*スマプラ対応。
*初回盤(紙ジャケ仕様)もあり。
New Release
「LOVE IS BORN ~17th Anniversary 2020~」
(収録曲)
01. LOVE FANTASTIC
02.shooting star
03.One × Time
04.HEART
05.チケット
06.扇子
07.向日葵
08.ふたつ星記念日
09.雨色パラソル
10.あっかん べ
11.TOKYO散歩
12.XOX
13.ロケットスニーカー
14.フレンジャー
15.さくらんぼ
16.Birthday Song
* DVD、Blu-ray、CDすべてスマプラ対応。
* DVD,Blu-ray のみ【特典】大塚 愛によるオーディオコメンタリー(副音声)あり。
2021年2月3日発売
[DVD]
AVBD-92981
¥5,000(税別)
[Blu-ray]
AVXD-92982
¥5,000(税別)
[CD]
AVCD-96645
¥2,500(税別)
大塚 愛 オフィシャルサイト
https://avex.jp/ai/