Chara「わたしの中にないものは歌えない」愛を歌い続ける理由

【音楽通信】第126回目に登場するのは、唯一無二の存在として、デビュー31年目を迎えてもなお輝き続ける、ミュージシャンのCharaさん!

音楽との出会いは、幼稚園での伴奏体験


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【音楽通信】vol.126

1991年のデビュー以降、オリジナリティあふれる楽曲や一度聴いたら忘れられないスウィートなウィスパーボイスで、圧倒的な存在感を放ち続けている、Charaさん。

1996年には、女優として出演した岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』が公開され、日本アカデミー賞の主演女優優秀賞を受賞。劇中のバンドYEN TOWN BANDのボーカルとして参加した主題歌「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」、翌年に発表したアルバム『Junior Sweet』は連続してオリコン1位のミリオンセラーを記録し大ヒットしました。

この頃からファッション、ライフスタイルを含めた新しい女性像としての人気も獲得し、音楽活動においてはデビューより一貫した音楽的探求を続け、各時代を担う気鋭のアーティスト、クリエーターとのコラボレーション作品や活動が数多いことでも知られています。

ずっと“愛”をテーマに曲を作り、わたしたちに素敵な歌声を届けてくれるCharaさん。2021年にデビュー30周年を迎え、2022年11月1日にシングル「A・O・U」をリリースされるということで、音楽的なルーツなどを含めて、お話をうかがいました。

――Charaさんが音楽に出会ったきっかけから教えてください。

わたしが「これは音楽に出会った」と明確に記憶している出来事があって、それは幼稚園のときのことでした。その頃はまだ音楽を習っていなかったですし、家にも楽器が無かったんですが、幼稚園のうさぎ組さんの教室に足踏みオルガンがあって。担任の先生が演奏してくださって、みんなでお歌を歌うんです。

毎日歌う曲があって、帰る前に行う、さよならの会のときに「今日はこ〜れ〜でおわかれし〜ま〜しょ さよなら〜さよなら〜♪」(と実際に歌ってくださるCharaさん)という少しバロック調の歌があるんですが、毎日聴いているから耳で覚えていました。あるとき、休み時間にふと先生に「これ弾いていいですか?」と聞いた記憶があって。その後「先生の代わりに伴奏してくれる?」と言われたんです。

いきなり先生に言われてドキドキしましたが、やってみました。毎日歌っている曲だから、いつも通りに大きなお口を開けてみんなで歌ってくれて。その伴奏をしたのが、わたしの音楽との出会いですね。そのときから、楽器ができると人の役にも立つし、コミュニケーションツールとして役に立ってくれたと感じて、いまでも楽しかったなあと思い出します。

――幼稚園でみんなの伴奏をしたのは、楽器を習う前ですものね?

全然前です。それまでは家にも紙の鍵盤しかなかったぐらいですから、要はイメージトレーニングですよ(笑)。それが役に立って、楽器を習っていないのに、耳で聴いた感覚だけでピアノが弾けたのかな。小さいときは音楽的に恵まれた環境じゃなかったからこそ、自分なりに独特な発想で何かを作り出そうとするようになったのかもしれませんね。

――その後、実際に楽器を習うようになったのですね。

幼稚園に付いているヤマハの音楽教室があったんです。仲良しのかすみちゃんが習っていて、一緒にいたいから、初めてお母さんに「わたしも行きたい」と頼んで音楽教室に通うようになって。そこは「先生が最初のフレーズを出すから続きを作っておいで」と、作曲の宿題が出る専門的な教室でした。

――では、いつ頃から音楽の道を目指されましたか。

最初に目指したのは、作家なんです。もともと作曲することが好きだから。高校生の頃からバンドをやっていましたが、歌ではなく、キーボードを担当していました。19歳ぐらいのときに、ソニーで新人を発掘する部署の方から、「ソロでやらない?」と歌うことを勧められてやってみたんです。


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――もともと歌の才能もあったからこそのデビューですね。

この話を聞くとそう思いますよね? でも、そのときにできることを一生懸命やっていたら、未来につながるよと言いたい。まず才能は、自分を信じる力だと思うんですよね。わたしのデビューが決まったのは、レコード会社の偉い人が来て、その人のOKが出るとデビューできるらしいという「プレゼンライブ」でした。歌が下手で、うまく歌うことはもう諦めて、ライブではすごく踊っていたんです。「歌はだめだけど、全身でがんばる!」みたいな(笑)。

ステージに立ったら、頭からつま先まで、全身で見せられるから。客席には白髪頭のおじさまが一番前にいらっしゃって、すごく踊っていて、その方の前に行ってグイグイわたしも踊って。あとでわかったのは、そのおじさまがレコード会社の一番偉い方で、言われた言葉が「歌はまだまだだけど、踊りがいいから」って。そのときは歌ではなく踊りをがんばったわけなんですが、それでデビューが決まったから、なんでもできることを最大限やるといいかなと。わかる人は、原石の状態でも見抜くんだと思うんですよね。

――すごいお話です。そうして1991年9月にシングル「Heaven」でメジャーデビューされてから30周年を超え、現在31年目となりました。

小さいときから何事もがんばりたいタイプなので、31年目にしてそういう積み重ねてきた「あきらめないでやってみる」という筋肉がしっかりとついているんです。その部分はずっと変わらず、そしてイメージすることも大事にしてきていて。たとえば子どものお誕生日会でも「おいしいって言ってくれるかな?」と、お母さんたちが子どもが喜んでくれるメニューを考えることにも似ているというか。「どうやっておもてなししようかな」という、サプライズを考える繰り返しが生活だから。

わたしたちの音楽の仕事も、ステージでおもてなしをする要素がとても多いです。いまはコロナ禍でライブをすること自体が貴重なこともあって、より一層、毎回ライブでそういうことを考えるのが好きになりました。でもそれは日常生活でも好きなことなので、普段から、おもてなし筋肉がついてきているから、それがどんなことか知りたい方がいたらぜひ一度、ライブに来てください(笑)。

ニューシングルも恋と愛にまつわるお話


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――2022年11月1日に、レコード会社を日本コロムビアに移籍しての第1弾シングル「A・O・U(エーオーユー)」をリリースされますね。

そうなんです。これまで恋の歌や愛の歌しか歌っていないですが、わたしの中にないものは歌えないので、今回も恋と愛にまつわるお話。わたしが日常的に植物からパワーをもらっていることもあって、永久凍土の中に眠っていた約3万年前の植物の種から花が咲いたというニュースに興味を持って、「その花、うちでも咲かないかな?」って。

それにインスパイアされて、わたしも不思議と突然お花が蘇って咲いたような気持ちにリンクして、勝手に涙が出た日があったんです。わたしの個人的な愛にまつわるお話と、そのインスパイアされたお花に合わせて、歌詞も書きました。

タイトル「A・O・U」は、歌詞にもある“all of you”の訳です。あなた方すべてに、というような意味ですが、デモ曲ができたときすでに「all of you」と口ずさんでいて、いいなあって仮でタイトルをつけていたぐらい。最終的に「A・O・U」にしました。

――今作は以前から制作でご一緒されることもある、ドラマーでもありシンガーでもあるmabanua(マバヌア)さんがサウンドプロデュースされていますね。

mabanuaさんとは付き合いが長くて。彼がいまのように名プロデューサーになる以前のインディーズの頃からで、自分のアルバムを持ってスタジオに挨拶に来てくれたこともあって。彼のアルバムを聴いたら素晴らしくて、すぐ連絡をとりました。2010年ぐらいからの知り合いで、2011年にはわたしのアルバム『Dark Candy』を一緒に作っています。もうわたしの独特の曲作りの仕方にも慣れてきたんじゃないかな。Charaの作ったデモ曲の良いところをサウンドプロデューサーとして遠慮せずに出してくれるミュージシャンなので、やりやすいですね。

――信頼されている感じが音からも伝わります。

mabanuaさんは良き理解者なんです。知り合ったときから、素晴らしく成長していますね。

――「A・O・U」は現在放送中のドラマ『最果てから、徒歩5分』(BSテレ東 毎週土曜 午後9時)の主題歌にもなっていますが、書き下ろしではなかったそうですね。

曲ができたあとから、選んでいただきました。もしも主題歌にと意識していたら、また違った曲になったはず。でも、それで使ってもらえるのが美しいかたちかなって。実際、ドラマにも合っていたので良かったです。

――カップリング曲「面影」は、しっとりと心地よいミディアムナンバーですね。Charaさんのライブでコーラスも担当されることのあるシンガーの竹本健一さんとの共作で、大橋トリオさんが演奏とサウンドプロデュースを担当されています。

最近のライブステージでは、ほぼ竹本さんがコーラスとして、わたしの声に寄り添ってくださることが多いです。良き理解者になると、一緒に曲を作りたいんですよ。曲を作ってこそ、ミュージシャン同士の親友になれるというタイプなので、わたし。この曲は、最初から「面影」というタイトルをつけたくて、ピアノで作りました。そこでピアノに関して、アコースティックさにもエレクトリックピアノにもソウルにも理解があって、高度なアレンジが得意な人って誰だといったら、大橋さんしかいない。

大橋さんも、mabanuaさんも、楽器を演奏されるので、ご自身のグルーヴもあって。もともと「A・O・U」も「面影」も春ぐらいに出したいと思っていたんです。でも、コロナ禍の制限もありますし、おふたりとも忙しいからスケジュール待ちもあって、いまのタイミングに。どちらも、昨年、レーベル移籍用に作ったデモの中に入っていた曲です。

――「面影」で、Charaさんが「積み積み積みあげて」と歌われるところも好きです。

♪とぅみ、とぅみ〜と聴こえるところでしょ(笑)? そういう、詞をリズムに乗せるやり方が、わたしらしさ。オノマトペもすごく好きですし、同じ言葉を繰り返したり、印象的になったりする歌詞が好き。フラットだけど、メロディに抑揚をつけていくのがけっこう好きで、ああなっちゃうんですよね。

――いつも曲作りはどのようにされているのですか。

どんな状況でも作ります。ただ、オンオフがあって、作るモードに入るかどうか、何を意識するかどうか。お題が出たらそれを意識したりもします。

音楽に嫌われないよう何歳になっても勉強したい


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――最近は、阿部寛さん主演のディズニープラス「スター」日本初オリジナルドラマシリーズ『すべて忘れてしまうから』に、映像作品としては映画『スワロウテイル』以来26年ぶりにご出演されていますね。以前そのドラマインタビューもさせていただきましたが、配信後の反響はありましたか。

ドラマのプロモーションでイベントを開催したときは、インスタやCharaのモバイルファンサイトに、ファンの方が書き込みや生チャットで感想を言ってくれましたね。基本的には、SNSでもエゴサーチとかしないからわからないんですが、気にしていたら生きていけないかもしれないから気にしない(笑)。ドラマでは、毎話別のアーティストがそれぞれ異なる曲をライブで披露しますが、わたしも5話では役の「カオル」として歌って、今後Charaとしても歌います。

――ドラマも楽しみです! では普段のご様子もお聞かせください。おうちではどのようにお過ごしですか。

家にいるとすごく忙しいです。主婦って、掃除とか、やろうと思えば限りなくやることがありますよね。この時期、寒くなったから、衣替えも大変。昨日は秋の風をベッドルームにいても感じられるようにと、風の流れを考えてベッドの位置をずらすうちに、部屋の模様替えになって(笑)。わりと内側から整理しようとするタイプなんです。

家の掃除に限らず、なんでも表面的なところよりも、内側から整える。最近はキッチンに新しい調理道具をそろえて、包丁も錆びないようにと磨いたり。昔は全然そんなこと気にしませんでしたが(笑)、錆びを拭くのは自分の成長ですね。毎日、花もいけています。

――Instagramにときどきワンちゃんが登場しますね。

「モジョ」という犬とふたり暮らしをしています。2014年に我が家にやってきまして、もう9歳。おじさん犬です。

――とても小さいので、見るとまだ赤ちゃんのような愛くるしさですよね!?

だから、ちっちゃいおじさんをいつも抱っこしているんですよ(笑)。

――ちっちゃいおじさん、可愛いですね(笑)。以前は娘さん(女優のSUMIREさん)と息子さん(俳優の佐藤緋美さん)も一緒に暮らしていたときは、育児や家事、仕事との両立で大変ではなかったですか。

子どもが小さいときは、まだ体力あったから、なんとかやっていました。アーティストって、ひらめいたときに曲作りをやりたいんですが、時間的にはそうもいかない時期もあって。子どもが泣いていると子ども優先になるから、何時から何時はChara、帰ってきたらメインは子どものママって、仕事の時間の使い方を分けましたね。

でも、音楽が好きだし楽器が好きだから、子どもと遊ぶのに楽器を使うこともあって。一緒に音楽を聴くときはお母さんのCharaの選曲で、本を読むテンポやリズム感もCharaっぽいかも。まあ、普通のお母さんですよ。

――ファッションアイコンとしても輝くCharaさんですが、ファッションのこだわりはありますか。

チクチクする素材が苦手なんですよね、かゆくなっちゃうから。買いに行くときは触って確かめますし、仕事でスタイリストさんがいるときは、一緒に洋服を見て最新のものを買います。アップデートするのはきらいじゃないので、ストリートカジュアルも取り入れて。若い人が着るブランドだからおばちゃんは着ちゃいけないとかは、わたしの中にまったくなくて。それは着たら恥ずかしいという、似合わないわたしになる前に、好きな洋服を着られる自分でいるように、多少は体型にも気をつけますけどね。洋服が好きだから。

ヴィンテージクローズがけっこう好きです。60年代や70年代のデザインはやっぱり好きですね。新しいものにも、古いものにインスパイアされて作っているデザイナーさんもいますしね。

――いろいろなお話をありがとうございました! では最後に、今後の抱負をお聞かせください。

好きでたまらない音楽から嫌われないように、何歳になっても、勉強したいです。もっと知りたいという気持ちがあるのは、ありがたいこと。だから抱負もたくさんあるんですが、あまりいろいろな街へコンサートに行けていないので、小編成やひとりでやるといったさまざまなスタイルでやってみたいですね。人生でやっていないこともまだあるので、着実にできることに向かって、いまリサーチ中です。

あとは、みんなが「Chara、良かったねー!」って言ってもらえるような恋とか、結婚とかがあるのかも(笑)!? 『anan』にもときどき載っている占い師のルーシー・グリーンさんに、この間、友達と一緒にタロットで占ってもらう機会がありました。みんな「11月以降に出会いがある」って。「3月以降もまたいい感じです」って言われたから、今後が楽しみです(笑)。

取材後記

ひとりのミュージシャンとしても、女性としても、母としても、多くの女性が憧れる存在のCharaさん。ananwebの取材では、今回リモートインタビューをさせていただきましたが、画面に映るCharaさんがユラユラ揺れるときがあって「ごめんね、椅子がすごい揺れて(笑)。体幹を鍛える揺れる椅子で、テーブルは卓球台なんだよね(笑)」と、おしゃれな椅子と家具を画面で見せてくれるCharaさんがとっても可愛くて、楽しい時間を過ごさせていただきました。そんなCharaさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね!


取材、文・かわむらあみり

Chara PROFILE
1991年9月、シングル「Heaven」でデビュー。1992年の2nd アルバム『SOUL KISS』では、日本レコード大賞ポップ、ロック部門のアルバム・ニューアーティスト賞を受賞。1996年には、女優として出演した岩井俊二監督の映画『スワロウテイル』が公開され、「第20回日本アカデミー賞」主演女優優秀賞を受賞。劇中のバンドYEN TOWN BANDのボーカルとして参加した主題歌「Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜」、1997年のアルバム『Junior Sweet』と連続してオリコン1位のミリオンセラーを記録し大ヒットする。

2019年、THE MILLENNIUM PARADEのシングル「Stay!!!」ではボーカルを担当。2018年12月、オリジナルアルバム『Baby Bump』をリリース。2020年2月にはYUKIとのユニット「Chara +YUKI(チャラユキ)」名義でミニアルバム『echo』をリリース。2021年9月にはデビュー30周年を迎えた。2022年11月、シングル「A・O・U」をリリース。

Information


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New Release
「A・O・U」

(収録曲)
01. A・O・U
02. 面影
03. A・O・U(Instrumental)
04. 面影(Instrumental)

2022年11月1日発売
*収録曲は全形態共通。

(通常盤)
COCA-18047(CD)
¥1,650(税込)

(初回限定盤)
COZA-1954-5(CD+Blu-ray Disc)
¥4,950 (税込)

【Blu-ray Disc収録予定曲】
Chara’s Time Machine:30th Anniversary Live
せつないもの/初恋/FANTASY/才能の杖/Tiny Dancer/悲しみと美/タイムマシーン/ミルク/大切をきずくもの/hug/恋をした/しましまのバンビ/70%-夕暮れのうた/Swallowtail Butterfly ~あいのうた~/Time After Time/月と甘い涙/Duca/スカート/世界(JEWEL ver.)/Break These Chain/あたしなんで抱きしめたいんだろう? /やさしい気持ち/Happy Toy

(7inchアナログ)
※2022年12月3日発売
COKA-92
¥2,200(税込)

(7inchアナログ収録曲)
Side-A. A・O・U
Side-B. 面影


Chara オフィシャルサイト
https://charaweb.net/

「A・O・U」MV
https://www.youtube.com/watch?v=zP8LH1v6ZVI

Chara Twitter
https://twitter.com/Chara_xxx_

Chara Instagram
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