yama「新曲の『機動戦士ガンダム 水星の魔女』主題歌は自分と対話して歌っています」

【音楽通信】第137回目に登場するのは、素顔を見せず謎のベールに包まれながら、SNSをきっかけに大ブレイク中の新世代シンガー、yama!

歌うことで自分の存在意義を確かめていた


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【音楽通信】vol.137

2018年よりYoutubeをベースにカバー曲を公開し、音楽活動をスタートした、yamaさん。2020年4月に発表した、自身初のオリジナル楽曲「春を告げる」が大ヒットし、ストリーミング再生で3億回を突破。

さらに2020年の10月にはシングル「真っ白」でメジャーデビュー以降も、数々のドラマや映画の主題歌に抜擢されるなど、脚光を浴び続けています。

芸術的なアイマスクとブルーのヘアスタイルという、ミステリアスなルックスも印象深いyamaさんが、2023年5月10日にニューシングル「slash(スラッシュ)」をリリースされるということで、音楽的ルーツを含めて、お話をうかがいました。

――そもそもyamaさんが音楽にふれたきっかけや、影響を受けたアーティストから教えてください。

幼少期は、歌うことで、自分の存在意義を確かめていました。なんの取り柄もないけれど、歌を歌っている瞬間は周囲の人たちが褒めてくれて、自分のことを見てくれていると気づいて、歌を歌うようになって。だんだんと歌うことが好きになって、歌っているときは、「自分が存在していてもいいんだ」と思える瞬間だったんですよ。

よく聴いていた曲と言うと、もちろん音楽はずっと好きですが、特定のアーティストを応援するよりも、楽曲ごとに「いいな」と思うものをずっと聴いてきていて。その裏には、音楽に救いを求めているけれど、「自分も表現したい」という思いも常にありました。そんななかで、次第にいろいろな方の音楽も聴くようになって、メジャーアーティストで言えば東京事変さんなど、そのときに流行っているものからちょっとコアな楽曲まで聴いていましたね。

でも、一番強く影響を受けているのは、ボーカロイドの楽曲たちです。中学生の頃、ボカロ曲を聴くようになってから、「カバーする文化もあるんだ」と知って、親に買ってもらったパソコンで宅録を始めました。


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――もともと、将来は音楽の道に行こうと思っていましたか?

小学校低学年の頃、将来は音楽で食べていけたらいいな、歌手になれたらいいなと言っていたんですが、まだ幼いので現実の厳しさを知らず。でも、家族から、現実はそんなに甘くない、ということを心配と優しさから言われて。自分の力では難しいから、諦めたことも。だから、本当に「音楽で生きていけるかもしれない」と意識するようになったのは、普通に社会に出て、働き始めてからです。働きながら音楽活動も続けられたらとYouTubeには変わらずカバー曲を公開していたら、いまのレコード会社の方に声をかけてもらって。それから、音楽で食べていけるかもと思いました。

――2020年10月には、シングル「真っ白」を配信リリースして、メジャーデビューされました。その後は歌番組の出演やライブなど、さまざまな音楽活動をされるようになりましたが、デビュー以前と以降で、心境の変化はありましたか。

ありすぎてもう(笑)。日々、気持ちが変わっていっている感じがします。以前は田舎に住んでいて、メジャーデビューで上京するまでは保守的な性格だったので、何も変わりたくないし、変えたくないし、という確固たる自分の意見がありました。でも、メジャーデビューしてから、自分ひとりで成り立っているわけじゃないなと強く感じることが多々あって、もっと心を柔らかくしたいと。素直に、柔軟に、いい方向に進化していける自分でありたいと感じるようになったので、その心境の変化は大きいかもしれないです。

色が違う3曲を楽しんで聴いてほしい


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――2023年5月10日、ニューシングル「slash」をリリースされます。まずこの曲を聴いた第一印象はいかがでしたか。

これまでリリースしてきた楽曲とはまた違った、自分の新しい表現ができそうと言いますか。聴く人によっては、新しいと感じるような楽曲ではないかなと感じました。

――「slash」は、4月9日から放送中のTVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』Season2(MBS/TBS系 毎週日曜午後5時)のオープニングテーマで好評のようですね。人気あるガンダムシリーズにご自身の歌声が乗るお気持ちは?

すごく歴史のある「ガンダム」シリーズで愛されていますし、ファンの方もたくさんいらっしゃる作品なので、最初はプレッシャーもありました。でも、この楽曲を聴いて作品に寄り添いながら取り組んだので、もしも歌を気に入っていただけたのであれば、本当によかったというホッとしたような気持ちです。

――楽曲自体もそうですが、アニメともあいまってとてもドラマチックに歌が届く印象を受けますが、歌うときに意識されていることはなんでしょうか。

歌を聴いた人が、ドキドキするかどうかと言いますか。そのドキドキ感は、楽しさでもいいんですが、喜怒哀楽があるなかで、何かしらの衝撃を受けてほしいなと常々感じています。最近は、歌を表現するときに、どれだけ感情を込められるかを意識して歌っていますね。

――「slash」は、直訳すると「斬りつける、一撃」という意味もあります。歌詞のサビで「slash your tears away(あなたの涙を切り捨てて) もう 逃げることはしない」と歌う部分に強さを感じますが、歌詞の世界観に入って、歌うこともありますか。

そうですね。けっこう感情移入しています。もちろん「ガンダム」という作品があるうえでできた楽曲ですが、自分でも歌の言葉に共感することも多くて。自分自身に向けて、自分と対話をしているようなイメージで歌っています。この歌詞に「お前が嫌いだ」と歌う部分があるんですが、その“お前”は“自分”であり、自分に向かって言っている言葉。すべて自分との葛藤が言葉に表れているなぁと思って、すごく感情移入して歌っていますね。

「slash」という言葉だけだと、斬りつけるような残虐な言葉に聞こえるかもしれないですが、それは必ずしも人に対しての意味ではなく、自分の中にある弱さや逃げている部分に対してだと思っていて。前へ進むために、そういった部分を斬っていくというイメージです。いろいろな感情を表現できるように、そしてこれまで見せていなかった本来の自分が持っている感情も込めようと挑戦した楽曲なので、その新鮮さも楽しんで聴いていただきたいですね。


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――2曲目の「いぶき」は、1曲目とガラリと変わって、軽やかでポップなナンバーですね。

はい、カンロ「ピュレグミ」のCMソングとして使用していただいていて、テーマが“ときめき”なんです。いま季節的にも春ですし、ときめき、と聞いて連想するキラキラした風景や、ちょっと輝いている場面を意識しながら歌っていますね。曲によって、声のトーンや歌い方も、それぞれの曲に合った表現ができるようにしています。

――3曲目「ストロボ」は、yamaさんの作詞作曲によるエモーショナルなオリジナル楽曲ですね。いつ頃作られた楽曲なのでしょうか。

もう、納品ぎりぎりですね(笑)。今年に入って作りました。シングルを出すと決定していた段階で、自分で作詞作曲した楽曲を収録する、ということは決めていたんです。でも、なかなか降ってこないと言いますか、形にできなくて……。楽曲を作っては壊し、作っては壊しとやっていて、ぎりぎりでできたのがこの曲です。

――どんな思いを込めて作られたんでしょうか?

「ストロボ」というタイトルや歌詞にもありますが、閃きについて歌っています。パッと瞬間的に光る光=日常生活をしているうえで、心が動く瞬間だととらえていて。たとえばそれは自分にとってはライブをしているたった一瞬のその景色のことだったり。ライブ以外でも、生活していて頭に残って焼きついているもの、記憶だったり。どんなに暗闇にいても、それが瞬くことによって少しずつ足もとを照らしてくれて、ちょっとずつ進めるから、というイメージで作りました。

――作曲される際は、ひとつのテーマを決めて作っていくような感じなのでしょうか。

いろいろですね。毎回作り方は変わるんですが、多くの場合は「こういうメッセージを曲にしたい、音楽にしたい」と閃いて決まったら、すごくはやく作れます。決まったあとは、歌詞はすでにいくつか使いたいワードがあるから、メロディとコード進行をギターの弾き語りをしながら作っていって。ある程度、形になったら、全体の構成を考えながら、整えていく感じですね。逆に、テーマ性ではなく、「こういう音楽、こういう曲が欲しいな」というときに、ドラムから作るときもあります。でも、多くの場合は、メッセージが先にありますね。

――それはやっぱりyamaさんが歌い手だからですか。

そうですね、自分で作詞作曲する意味は、やっぱり偽りのない言葉かつ何かの条件にとらわれていないこと。ちゃんと自分軸で表現したいことを形にしたいと思っているので、メッセージに嘘はないようにと気をつけていますね。「ストロボ」の歌詞は、ずっと作りたかったテーマだったので、できてよかったです。

――多彩な楽曲が収録された「slash」をどんなふうに聴いてほしいでしょうか。

「slash」も「いぶき」も「ストロボ」も、それぞれに思いを込めている、色が違う3曲なので、楽しんで聴いてほしいですね。

ずっと残り続けるものを届けたい


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――メジャーデビュー以前と以降で心境の変化があったお話もうかがいましたが、いまはほかのアーティストの方との交流やコラボレーションも増えていますね。2021年にyamaさんも「Hello/Hello feat. yama, 泣き虫」で参加された「MAISONdes(メゾンデ)」に、今年このananweb音楽取材でご登場いただいたのですが、asmiさんがyamaさんと交流したことがあるとお話されていました。

asmiさん、そうですね。交流があります。ただ、自分に自信がないので、以前は本当にほかのアーティストさんと仲良くするなんて「自分なんぞが!」と思ってできなかったんですが、最近はできるようになりましたね。オープンにその人の考えを聞くことで刺激を受けることもありますし、こちらにも興味を持ってもらえることもあるので、人見知りですが、なるべくお話できるときはするようにしています。

――最近は、ジェニーハイさんともコラボされていらっしゃいますが、どうでしたか?

めちゃよかったですね(笑)。コラボさせていただいて、楽曲制作やミュージックビデオの撮影までご一緒させていただいて、すごく楽しかったです。やっぱり、自分以外のアーティストさんやグループ、バンドの方と関わると、すごく刺激を受けますね。いい経験になりました。

――ほかの方とコラボして交流されることも気持ちの変化の表れでもあるのでしょうか。

そうかもしれないですね。以前なら、もっと臆病になっていたと思います、自分でいいんだろうか、と。自信なさげに参加していたような気もします。でもいまは、声をかけていただいたからには全力でお応えしよう! という、前向きな気持ちになりましたね。

――ソロでもコラボでも、歌うときは、受け手にどんなふうに届くといいなと思って歌っていますか?

心配性で不器用でちょっと立ち止まることも多いという、自分自身の等身大の気持ちを歌で表現したときに、歌う自分のことは関係なく、音楽自体から何かを受け取ってもらえたらいいですよね。音楽を通して、少しでも癒やされたり、その人の人生や日常が豊かになればいいな、とずっと思っています。いまは簡単にいろいろな音楽を次から次へと聴ける時代ですが、そのなかでも自分の歌を聴くことで、何かしらの衝撃を感じてもらえればなと。ずっと残り続けるものを届けられたらと考えています。

――いろいろなお話をありがとうございました。では最後にyamaさんの今後の抱負をお聞かせください。

これまで同様、ライブや音楽制作以外のことにも、熱量を注いでいるところです。常に、より大きなステージでワンマンライブをすることが目標。そして、もっと自分に正直に、自信を持って、ちゃんと自分の言葉を発言できるようになりたいですね。

取材後記

新世代シンガーのトップランナーであるyamaさんがananwebに登場。インタビューではしっかりとご自身のお気持ちを素直に聞かせてくださり、謎めいた存在でありながらも、音楽に向き合う強い意志を感じさせていただきました。そんなyamaさんのニューシングルをみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね。


写真・園山友基 取材、文・かわむらあみり

yama PROFILE
SNSを中心にネット上で注目を集める新世代シンガー。

2018年よりYoutubeをベースにカバー曲を公開し、音楽活動をスタート。2020年4月に自身初のオリジナル楽曲としてリリースされた「春を告げる」はSNSをきっかけに急速にリスナーの心をつかみ、ストリーミング再生で3億回を突破。

2023年5月10日、ニューシングル「slash」をリリース。

Information


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New Release
「slash」

【Disc1 / CD 収録曲】
01. Slash
02. いぶき
03. ストロボ

2023年5月10日発売
※収録曲は「Disc1」3曲目まで全形態共通。

(通常盤)
SRCL-12539(Disc1 / CD)
¥1,320(税込)

(完全生産限定盤)
SRCL-12536-38(CD+BD+アクリルスタンド)
¥4,400 (税込)
※Disc1は通常盤と同じ。
※Disc2 は「BD」Studio Live映像、「付属品」yamaアクリルスタンド。

(期間生産限定盤)
SRCL-12540-41(CD+BD)
¥2,200 (税込)
※Disc1は通常盤と同じ収録曲に加えて、期間生産限定盤のみの04.「slash anime ver.」も収録。
※Disc2は「BD」TVアニメ『機動戦士ガンダム 水星の魔女』オープニングノンクレジット映像。


yama オフィシャルサイト
https://www.sonymusic.co.jp/artist/yama/

yama YouTube
https://www.youtube.com/channel/UClbieOB_NYcY9TlIthmyw-A/featured

yama Twitter
https://twitter.com/douhwe