ゆっきゅん「もっと広く音楽を届けたい」音楽活動10周年のDIVAの現在地

【音楽通信】第158回目に登場するのは、今年音楽活動10周年というアニバーサリーイヤーを迎えた、DIVAとしても知られる、ゆっきゅんさん!

ソロで歌い始めたときが一番大きな変化を感じた

ゆっきゅん

【音楽通信】vol.158

2014年よりアイドル活動を開始し、今年活動10周年を迎えたDIVAゆっきゅんさん。音楽活動はもちろん、雑誌『anan』での連載をはじめ、文筆家や作詞家としても大活躍中です。

そんなゆっきゅんさんが、2024年9月11日に2ndアルバム『生まれ変わらないあなたを』をリリースすることに先駆けて、収録曲を5月から4か月連続で先行シングルとして配信。いち早く新曲について、お話をうかがいました。

――まず活動10周年を振り返ると、いかがですか?

2014年に進学のため上京して、「ゆっきゅんです、アイドルです」と手探りで活動してきました。2016年からはアイドルユニット「電影と少年CQ」、そして2021年5月からセルフプロデュースの「DIVA Project」をスタートしてソロ活動もしていますが、活動10年間のうち7年くらいは学生だったので、それほど10周年という実感はないんです。

ただ、転機はいくつかあって、大学院を卒業してソロで歌い始めたときが一番大きな変化を感じました。それまでとそこからの時間がまったく別物の感じがあるので、10年やってきましたが、やっとこれから本格的にやるべきことが見えてきたところです。


ゆっきゅん

――2022年4月に初めて、1stアルバム『DIVA YOU』について「ananweb」で音楽取材をさせていただきました。そこからの2年間でさらに飛躍された印象ですが、ご自身でも心境の変化や手応えはありますか。

昨年から少しずつ仕事は増えましたね。以前の私はたぶん、いろいろなことをやっている人というイメージだったのかも。いまは音楽活動があるうえで、コラムを書いたりトークをしたりするというスタンスです。きっと、ゆっきゅんはこういう人だろう、ということがわかりやすくなって、お仕事を依頼してもらいやすくなったのかなと。

基本的には、歌詞を書いて、歌って、それを人に見せるのが好き。だから、依頼されていなくても、ひとりで主催レーベルを立ち上げて自分で企画してディレクションしてと、これまで同様、音楽活動はずっと力を入れてやっていきます。

――雑誌『anan』では、1月31日発売号から、対談連載「ゆっきゅんのあんたがDIVA」がスタートしていますね。

本当に私がうれしいだけの連載をさせてもらっていて、会いたい人を何十人かあげて、対談させてもらっています。掲載の順番は違うんですが、最初に決まった対談相手が、作家の金原ひとみさんで「マジですか?」と(笑)。続いて文筆家の能町みね子さん、シンガーソングライターの柴田聡子さんなどと対談しました。本当に、「マガハやば!」みたいな感じです(笑)。それぞれ対談が終わったら、みんなとカラオケに行って、友達になり、交流が広がっています。


これからはもっといろんな歌を歌いたい

ゆっきゅん

――2024年5月15日に、アルバムからの先行シングルとして「ログアウト・ボーナス」が配信されました。ゆっきゅんさんが手がけている歌詞は、孤独な女性を描いた海外映画を観ていたら思いついたそうですね。

バーバラ・ローデンの『WANDA』(1970年)やアニエス・ヴァルダの『冬の旅』(1985年)といった映画の主人公の女性がひとりで放浪する姿が心に残っていて、そういうことを歌にしたいなと。その歌詞が浮かんだときは、兄の結婚式で愛知県刈谷市に行っていました。愛知県刈谷市は私の好きな山戸結希監督の地元であり、初期作はその地でロケをしていて。ちょうど同じ場所にいるんだから、ロケ地巡りでもするかとビジネスホテルを予約したんです。

でも疲れて行く気がしなくて、ひたすら部屋で天井を見ていたら、なんか東京にいるときと変わらない状態になって私は何をやっているんだろうと、映画の主人公たちの気持ちが急に見えてきて、2時間ぐらいで一気に歌詞を書きました。

――作曲は、2020年結成のロックバンド「えんぷてぃ」のフロントマン、奥中康一郎さんが担当しています。

奥中くんは、昨年1月に知り合っていて、夏に『Re: 日帰りで – lovely summer mix』を出したときに「ゆっきゅんさんの声はバンドサウンドにもめっちゃ合いますね」と言ってくれたんです。すかさず「じゃあ、なんか曲を一緒に作ろうよ」と話して。「歌詞が浮かんだらいつでも言ってください」と言うから、すでにできていた「ログアウト・ボーナス」の歌詞を渡して。少し打ち合わせをした夜には奥中くんからフルコーラスのデモが届いて、9月末には曲ができていました。

――この曲好きです。どことなくフリッパーズ・ギターを思い出すというか。ゆっきゅんさんの歌声が堪能できますし、バンドサウンドとも合っていて、また違う一面が見えました。

ありがとうございます。曲は、奥中くんは渋谷系っぽい感じを意識していたと言っていました。これまでは、曲も歌詞も、自分で自分を上げていくような鼓舞するものが多く、ファンのかたから「出勤するときに聴いています」というようなことをたくさん言っていただいていて。それはすごくうれしいんですが、人生の中での時間って、出勤時だけじゃないですよね。だから、これからはもっといろんな歌を歌いたいなって。


ゆっきゅん

――確かにこれまでは元気に背中を押すような曲も多かったですね。

そう。でも昨秋ぐらいから、もう少しストーリーテリング的な歌詞が浮かぶことが多くなってきて、直接的な応援歌以外のものも書くようになりました。この歌は仕事を辞めたとか、仕事じゃなくても何かをエスケープした、リタイアしたというときに聴ける歌にしたくて。歌詞が先にあったので、何を伝えるかはすでにできていて、どう伝えるかとなったときに、表現するものとそのやり方の距離を今までよりも考えることができた気がします。

「ログアウト・ボーナス」は、そういうときに聴ける歌になっています。歌詞に楽しそうなことは書いていないんですが、できるだけ明るく歌っていて。音楽って、聴いたときに、少しでも前を向けるものであってほしいから。

――そっと寄り添ってくれる曲になっていると思いました。ゆっきゅんさんは、これまではデジタルサウンドでダンサブルな曲のイメージがあったので、この曲を聴いたかたは、意外に思われるかたもいるかもしれませんね?

新境地みたいなものがないと、新曲じゃないという気持ちもあって、初めてバンドでレコーディングしました。アルバムのことも視野に入れ、最初にこの曲をレコーディングしたんですが、いまはなかなかアルバムとしてリリースしても全部を聴いてもらえない時代でもあって。

サブスクで聴くときに知っている曲があると聴いてもらいやすいので、それなら先行で4か月連続配信したら、さすがに注目してくれるかなと考えました。この曲ありきでアルバム制作は進みましたが、デジタルなサウンドの曲もあったりと、バラエティ豊かな仕上がりになっています。

――いまはボイストレーニングにも行かれているとか。

月に2回ぐらい行っています。奥中くんを含めたバンドのメンバーが実力派の若手専門家たちの集いなので、まともに歌えないとだめだな、うまくなりたいなあと思ってボイトレしています。


ゆっきゅん

――「ログアウト・ボーナス」のミュージックビデオには、女優の唐田えりかさんが出演していますが、でんぐり返ししている場面がツボでしたし、ゆっきゅんさんは妖精のように登場しますね。

でんぐり返しは金子由里奈監督の演出で、私が出てくるところは、「生まれ変わらないあなたが私を見てる」というイメージなんです。歌詞の最後2行に「生まれ変わらないあなたを私が見てる」とあるんですが、これは自分自身の気持ち。みんないろいろあると思うけど、それを見ています、というメッセージです。

――そして6月14日には、連続リリース第2弾の「シャトルバス」が配信されました。美しいピアノの調べにのせたバラードですね。5月、6月と先行配信の2曲は、前作とガラリと変わります!

みなさんにビックリしてもらおうと思って、リリースする順番を決めました。曲は、バンドにも参加してもらった、梅井美咲さんというピアニストのかたが演奏してくれています。J-POPラバーとしては、J-POPのアルバムには1曲は静かな曲があることが多いので、自分のアルバムにも絶対ピアノの曲を入れたいと思って。

「ログアウト・ボーナス」と同じく「シャトルバス」でも、これまでのJ-POPで描かれてこなかったであろう場面や気持ちを歌っています。この曲は、結婚式や同窓会に行って楽しかったんだけど、なんか自分がちょっとモヤモヤしていることに気づきそうなのが嫌だから、そうなる前に2次会に行かずに帰る人の歌を書きました。これまでと違うタイプの2曲が先行配信されましたが、7月にはまた元気な曲が出るので、安心してください(笑)。


“自分の歌”だと思ってもらえる曲を歌いたい

ゆっきゅん

――お話は変わりますが、現在、ハマっているものはありますか。

ハマっているのは、韓国のボーイズグループ「RIIZE(ライズ)」です。5月に日本初の単独公演が国立代々木競技場第一体育館で開催されて、行ってきました。私はメンバーのソヒくんが好きなんですが、本当に歌が好きで歌いたい人という感じがして、そういう姿を見ていると幸せな気持ちになります。

――いいですね!

あとは最近、タレントの野呂佳代さんが好きですね。もともと好きですけど。もしも職場にいてくれたらうれしい雰囲気の人だなと。三宅唱監督の映画『夜明けのすべて』(2024年)という映画を観たときに、実際に野呂さんは出演していないし、野呂さんより年齢が上の人物なんですが、まるで野呂さんのようだなと思うイメージの女性がいて。友達とも「我々は職場に野呂さんがいない現実とどう向き合うか」と話していたぐらい(笑)。

この映画は“同僚”についての映画だと思うんです。ひとりでいろいろと抱えていて、遊びに行く気すら起きないけど、生きていかなきゃいけないから、そんなときでも会社には行かなきゃいけない。一番顔を合わせるのも同僚なんだよな、と。私はいまアルバイトもしていないし、同僚がいない状況ですが、この映画の職場のような同僚だったら、かけがえないだろうなと、同僚という関係性にもハマっています。


ゆっきゅん

――視点がすごいですね。ちなみに本日のお洋服は、花柄にレーシーな部分が特徴的ですが、ご自身で作ったものですか?

いえ、これはRITSUKO KARITAというブランドなんです。最近は首がつまったデザインを好んでいて、冬はずっとタートルネックを着ていました。いまも首まである洋服を着ることが多いですね。

――いろいろなお話をありがとうございました! では最後に、今年の抱負を教えてください。

先行配信した新曲もそうですが、9月にリリースされるアルバムをたくさんの人に聴いてもらいたいです。前作ではもう誰にも褒められなくてもいいくらい、たくさんの褒め言葉をいただいたんですが、まだ届いていないな、足りないなという気持ちも。今回、楽曲作りに参加してもらったいろいろな人たちの力も借りて、もっと広く音楽が好きな人や、音楽はほとんど好きじゃない人にも、届けたいんです。

みんなにとって“自分の歌”だと思ってもらえる曲を1曲でも多く歌いたいなと。29歳になったばかりなので、一段落ついたら、30歳になるまでにまた新しくやりたいことが頭に浮かぶと思います。


取材後記

『anan』本誌の連載でもおなじみの、みんなのDIVAゆっきゅんさんが、再びananwebに登場。前回同様、今回もカメラの前で艶やかにポージングをきめてくださり、どの姿もチャーミングで見入ってしまうほど。インタビューも丁寧にご対応くださり、楽しい取材時間を過ごさせていただきました。29歳のゆっきゅんさんのいま、そして30代になってからの未来も目が離せません!! そんなゆっきゅんさんの楽曲をみなさんも、ぜひチェックしてみてくださいね!


写真・幸喜ひかり 取材、文・かわむらあみり

ゆっきゅん PROFILE
1995年5月26日、岡山県生まれ。2014年よりアイドル活動を開始。2016年からポップユニット「電影と少年CQ」としてのライブを中心に、個人では映画やJ-POPの歌姫にまつわる執筆、演技、トークなど活動の幅を広げる。

2021年5月より、セルフプロデュースで「DIVA Project」をスタート。「DIVA ME」「片想いフラペチーノ」の2曲を配信リリースし、インディーズデビュー。2022年3月、1stアルバム『DIVA YOU』をリリース。

2024年9月11日に2ndアルバム『生まれ変わらないあなたを』をリリース。


Information


ログアウト・ボーナスジャケット (Kaho Okazaki)

New Release
「ログアウト・ボーナス」

2024年5月15日配信

「シャトルバス」

2024年6月14日配信


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