コラム知らなかった……『知らなくていいコト』で気づいてしまった柄本佑の持つ色気
こんにちは、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。Suits WOMANでテレビをテーマにした連載コラムを書いています。
今回は、現在放送中の『知らなくていいコト』(日本テレビ系 毎週水曜夜22:00)をご紹介します。
週刊誌の現場で働く、主人公・ケイト
今作は、政治家の不正から芸能人のスキャンダルまで、日々スクープを追う「週刊イースト」の記者・真壁ケイト(吉高由里子)の公私で起こる出来事を、大石静さんが軽妙なタッチで描くお仕事系ヒューマンドラマ。
といっても、新人が成長していく過程を追ったほのぼのドラマではありません。吉高さん演じる主人公のケイトは、デスク代理に指名されたり、“ケイトチルドレン”と自称する後輩に支持されたり、なかなかやり手の中堅記者。プライベートでは、シングルマザーとして育ててくれた母親・杏南(秋吉久美子)が急死する際に言い残した「あなたのお父さん、キアヌ・リーブスなの」という言葉の謎に迫っていくなかで、父親はキアヌではなく、殺人犯の乃十阿徹(小林薫)かもしれないと知ってしまう“闇展開”に突入していきます。
いやぁ、でもこれって、ありえないですよねえ。最愛の娘に残す言葉としては、ユーモアありすぎチョイスじゃないですか、「キアヌ・リーブス」って。悲しむ娘を笑顔にするためにあえて、突然ハリウッド俳優の名前を出しちゃったという親心なのか、それとも本当の父親が殺人犯だったとしてそのことを隠すための思いつきだったのか、もしくは何かキアヌ・リーブスの映画出演作品に、出生の秘密が隠されているという暗号なのか。
いまのところ、その答えはまだ明らかになっていませんが、ケイトの出生の謎が明かされるかどうかも、このドラマの見どころのひとつといえるでしょう。
2月19日に放送された第7話では、恨みを持つ取材対象者にケイトが刃物で刺され、さらにかばったフリーランスの動物カメラマン・尾高由一郎(柄本佑)が背中を刺されるという、恐怖の襲撃シーンが繰り広げられます。
騒然とする編集部でしたが、やがて記者たちの取材根性で、そんな襲撃シーンでさえも撮影をして記事にするというたくましい展開になり、バシバシと指示を飛ばす敏腕編集長・岩谷進(佐々木蔵之介)。その様子を複雑そうな面持ちで眺める、ケイトの元カレ・野中春樹(ジャニーズWEST 重岡大毅)など、ケイトを取り巻く男たちはそれぞれが濃いキャラクターたちばかり。
筆者がかつて在籍していた雑誌編集部のなかに、週刊誌の編集部もありました。でもそれは「週刊イースト」のようなゴシップなども扱う週刊誌ではなく、筆者の場合はカルチャーなどを扱う“エンタメ専門週刊誌”だったので、ドラマとは全然種類は違うものの、週刊誌編集部特有のあの慌ただしさ、スピーディーさ、校了に向けて一気に編集していく集中力などが、劇中でも実にリアルに描かれている点も、個人的にはポイントが高いなと思って観ています。
主人公・ケイトと絡む、味わい深い三者三様の男たち
そしてケイトのまわりで注目すべき男は3人いるんです。ひとりめはやっぱり、佐々木さん演じる岩谷編集長。上からの圧力、編集部員からの相談、作家先生との食事会……すべてのことを尋常ではないスピード感と対応力で、バッサバッサと決断していきます。佐々木さんだからこその奥深さのある編集長が、本当に渋い! 自信みなぎる姿で編集部を取りまとめていく姿を見て、「しびれるって、こういうときに使う言葉かも」と思いました。
続いて注目すべきふたりめの男は、重岡さん演じる野中。かわいらしい雰囲気の王子系タイプかと思いきや、そもそもケイトとつきあっていたときはラブラブでプロポーズまでしていたのに、殺人犯の子どもかもしれないとわかって即ケイトを振った後、編集部の別の女とつきあいます。また、ケイトと別れた理由が“殺人犯の娘だから”だと尾高に話し、軽蔑の目で「最低だな」と言われる始末。実は尾高もケイトの元カレですが(みんな近場でくっついたり離れたりしすぎですよね〜、でもありがちな話です)、人間力の高い尾高と、低い野中のコントラストがくっきりと浮かび上がったエピソードだと感じました。
そんな野中は第7話で、とうとう他の週刊誌の記者に、ケイトの父親が殺人犯だとリークします。ああ、これをゲスと言わずして何というのか、クズ・オブ・クズとでも呼べばいいのか、澱んだ瞳の青年よ。これまでも闇を抱えている節は見受けられた野中でしたが、第7話で完全にダークサイドに堕ちてしまいました。こんな心底ゲスいと思わせる野中を演じる、重岡さんの体当たりの演技に拍手を送りたいです。
ここにきてフェロモンがダダもれる柄本佑
そしてもっとも注目したい3人目の男は、柄本さん演じる尾高です。柄本さんの一見、地味な印象になりがちなあっさりとした和風の顔立ちは、いわゆるイケメンといわれるタイプとは少し違うジャンルなのかもしれません。よく似ているといわれる実弟の時生さんは、元AKB48の前田敦子さんらと“ブス会”と称した、おたがいの顔をなぐさめあうという会を開いているそうですが、兄とはまた違うキャラで独自路線を確立されていますよね。
柄本さんのご両親も役者さんですし、奥さんの安藤サクラさんは日本を代表する若手実力派女優ですし、柄本さんを取り巻く環境がそうさせるのか、それとも生まれ持ってきたものなのか、画面を通しても自然とそのスター性が視聴者にも伝わってくるものです。派手さはないぶん、飾り気のない素材そのものの良さが際立つような柄本さんは、まさにシンプル・イズ・ベスト。きっと実生活で家族を持った責任感なども加味され、いい年の重ね方をされていることから、ここにきてダダもれるフェロモンを感じるのは私だけではないはずです。『知らなくていいコト』……いやいや、この色気、この魅力は知って良かったコトですよね、女性の皆さん。
そんな柄本さんが演じている尾高は、ケイトの父親かもしれないという殺人犯について、何かを知っている様子も垣間見えます。ダークサイドに堕ちてしまった野中のように、ケイトに対して歪んだ感情を持たず、小さなことにも大きなことにも動揺せず、常に自分軸をしっかりと持っている尾高。野中が“悪”なら、尾高は“正義”と言いたいところですが……やけぼっくいに火がついて、ケイトと尾高は禁断の恋に陥っています。妻子がある身の尾高ですが、すぐそばにいるケイトがあぶなっかしくて放っておけないんですよねぇ。
小柄な吉高さんが、180cmを超えるという高身長の柄本さんをバックハグしたり、ふいにキスをしたりする場面では、色めき立った視聴者の方も多かったのでは。この禁断の恋も物語をかき乱していくスパイスになっているのですが、2月26日放送の第8話の予告では、ゲス王子の野中が尾高にフルボッコにされながら、尾高とケイトの関係がバレたら大変になると吠えていました。
そして野中がリークした内容が記事になって、いよいよ“殺人犯の娘が週刊誌記者”ということが公になってしまい、ケイトを取り巻く状況は一転します。それまでスクープを追う立場だったのに、今度は追われる立場になるケイト。ケイトを守ろうとする岩谷編集長、陥れようとする野中、愛のある尾高……。彼らが今後どのようにケイトと向き合っていくのか、父親の謎は明かされるのか。ケイトと尾高の禁断の恋の行方は……そして柄本さんのフェロモンは今後もダダもれているのか!? 『知らなくていいコト』のクライマックスに向けて、目が離せません!
『知らなくていいコト』 https://www.ntv.co.jp/shiranakuteiikoto/
写真提供=(c)日本テレビ