コラムやっぱり右京さん!私たちが『相棒』にドはまりしてしまう理由〜その1〜

こんにちは、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。Suits WOMANでテレビをテーマにした連載コラムを書いています。

 ご長寿ドラマ『相棒』は2000年の2時間ドラマが出発点

杉下右京に所縁のあるロンドン。右側に見えるビルがスコットランドヤード。

今回は、現在放送中のドラマ『相棒season18』(テレビ朝日系 毎週水曜午後9:00)をご紹介します。

長寿ドラマとなった『相棒』は、「土曜ワイド劇場」(テレビ朝日系)という2017年まで放送されていた2時間ドラマ枠で、2000年6月に『相棒 警視庁ふたりだけの特命係』としてオンエアされたのが始まりです。「土ワイ」と言えば、断崖絶壁で殺人とかそういったイメージが強いと思いますが、実際に刑事や探偵シリーズ、旅情サスペンスものが数多く放送されていたのです。『相棒』は「土ワイ」で同年にもう1作、翌年にもさらに1作がオンエアされ、合計3作が単発ドラマとして制作されました。

これら単発ドラマはいずれも高視聴率をマークし、連続ドラマ化が決定。2002年10月から、1クールの連続ドラマとしてあらたにスタート。2003年10月からはタイトルを『相棒』として、2クールの連続ドラマとして制作され、現在の「season18」へと続いています。

「土曜ワイド劇場」からの作品で、のちに初めて映画化された『相棒』。それだけ視聴者の支持が高いドラマだからこそ、終わらずに新シリーズが登場し、劇場版も都度制作されているのも納得です。

実に20年も続く大人気ドラマとなった『相棒』ですが、初回から主演を務めているのは、水谷豊さん。数々のドラマや映画に出演し、歌手として歌を発表することもある水谷さんは、昭和時代には熱血教師ドラマ『熱中時代』シリーズの主演で高視聴率を記録するなど、当たり役も多数あります。

そんな水谷さんが、バディ(相棒)ものの刑事ドラマ『相棒』で主人公・杉下右京を濃厚に演じきっています。観たことのない方に向けてざっくり紹介しますと、警視庁特命係の警部である右京は切れ者すぎて変人に見られ、上層部からにらまれて「人材の墓場」といわれる特命係の係長に就きます。そんな右京が、度々事件に首を突っ込んでは見事に解決する手腕がドラマの見どころ。

話し方はなんだか上品ぶってるし、嫌味も上等、空気は読まないし、何かといえばイギリス贔屓のおじさん、右京。その独特のキャラクターは皆さんの周りにはなかなかいそうにないし、この主人公に感情移入をする視聴者は少ないだろう……はずなのに、なぜこれほど人気があるのかというと!?

中毒性のあるキャラクター「主人公・杉下右京」

右京自身に感情移入はできなくても、彼の異彩を放つ捜査力や頭脳明晰ぶりに惹きこまれてしまうから!これに尽きます。時には我を通して独自の捜査を繰り広げる右京は、もし職場にいたらやりづらい仕事相手に違いありません。

ですが、事件を解決する主人公としては、ひときわ輝く存在感のある右京。それはかの名探偵シャーロック・ホームズのように、圧倒的な推理力で点と線を結んでいきます。

右京は東京大学在学中にイギリス留学の経験があり、卒業後はキャリアとして警察庁に入庁し、ロンドン警視庁の「スコットランドヤード」で3年間研修をしていたという設定。だから、シャーロック・ホームズと同じく、イギリス文化を感じさせる雰囲気があります。このあたりミステリー好きのポイントですね。

イギリスといえば紅茶ですが、右京は紅茶を好み、特命係に出勤してからもよく飲んでいますよね。ティーポットをかなり上の位置に掲げ、ティーカップへと紅茶をサーブする姿は、もう定番に。変わり者だけれど女性や子ども、弱き存在にはやさしくジェントルマン。そんな隅々までこだわり抜かれたキャラクターは、ドラマの世界観に奥行きを持たせています。

それと、右京の口癖の数々。理路整然と抑揚なく話しがちな右京ですが、事件の捜査をしている際、質問をしている相手に対して「最後に、もうひとつだけよろしいですか」と言って、質問が終わりだと油断させながら、去り際にもっとも核心をついた疑問を投げかけます。

他にも「細かいことが気になってしまうのが、僕の悪いクセ」と言いながら細かく捜査を追求し、楽しげにしているのです。これらが『水戸黄門』の「この印籠が目に入らぬか!」と同じような山場へのきっかけになるのです。決まり文句があることで、視聴者は解決に向かうのだと安心する側面もあります。

「何?この人変人だけど、すごく仕事できるし、女子どもには優しいし、ハラスメントとかしないし、いい人だし、困ったとき頼りになるし、最高じゃん!」と、右京のことを知れば知るほど味が出て、そのキャラクターの中毒になってしまうのです。

だから回を増すごとに右京にどんどん釘付けになっていき、リピートされる口癖を聞くと安心感を覚えてしまうのです。こういった形式美を堪能できるのも、ご長寿ドラマならではといえるでしょう。これほどしっかりとキャラクターが描かれ、抜群の安定感のある右京だから、たとえバディが誰になろうとも、揺るぎません。

とはいえ、この『相棒』シリーズは右京の魅力だけで支えられているわけではありません。裏でドラマを支えるスタッフも秀逸なのです。『相棒』は1話ごとに完結する構成で、度々脚本家や監督が入れ替わることがあります。いくら王道パターンがあっても、同じものばかりでは視聴者は離れてしまいます。視聴者を飽きさせないドラマを作るべく、裏にいるスタッフたちが切磋琢磨した結果が、高視聴率へと導いていることは間違いありません。後半では、さらに『相棒』に深みを持たせている、あの人たちに迫ります!~その2~に続きます。