コラムやっぱり右京さん!私たちが『相棒』にドはまりしてしまう理由〜その2〜

テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。

今回は現在放送中のドラマ『相棒season18』(テレビ朝日系 毎週水曜午後9:00)を取り上げて、分析しています。~その1~はコチラ

 主人公の脇を固める演技派俳優の味わい深さ

警視庁を舞台にしたドラマでもっとも支持の高い『相棒』。

『相棒』では主人公の杉下右京がクローズアップされがちですが、人気の秘密を探るには、ドラマを彩り、脇を固める俳優陣のことも忘れてはいけません。

例えば、「土曜ワイド劇場」時代から出演しているあの人たち。

「暇かっ?」と言ってはふらりと特命係に現れてコーヒーを飲んでは雑談する、警視庁組織犯罪対策部組織犯罪対策第五課の課長・警視の角田六郎役の山西惇さん。特命係の隣りの部署にいる鬼課長ですが、実は数少ない特命係の理解者。大学時代から劇団に所属していた山西さんの自然体の演技が光ります。

次に、警視庁刑事部捜査第一課の刑事・巡査部長となる伊丹憲一役の川原和久さん。捜査権のない特命係が事件に首を突っ込んでくることが疎ましく、現場で右京に会うと「これはこれは、警部殿」と悪態をつくのがデフォルト。その表情がなんとも憎たらしく見える、通称・イタミンです。

先日放送されたスピンオフ映画『相棒シリーズ X DAY』(2013年公開)では、いま大人気の田中圭さんとともに川原さんもダブル主演していましたが、いぶし銀のような演技でストーリーを引っ張っていました。川原さんも大学時代から劇団に所属していて、伊丹刑事役が板についています。

続いては、警視庁鑑識課から、警視庁警察学校教官・巡査部長となった米沢守役の六角精児さん。まあるいフォルムと実直な性格で、意外と人気の高いキャラクター。右京と共通する趣味に落語があり、特命係に協力する見返りとして、落語のチケットをプレゼントされて右京になつくなど、わかりやすい人物という印象です。

スピンオフ映画『相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿』(2009年公開)で主演を務めたものの、六角さんの意思で「Season14」まででレギュラーからは降板。以降は警察学校教官として、たまに出演しています。六角さんも劇団所属で、抑えた演技を発揮していました。

最後に「season14」に単発で登場後、「season15」からレギュラー出演している、警視庁サイバーセキュリティー対策本部 特別捜査官・巡査部長の青木年男役の浅利陽介さん。一時期は特命係に異動させられていた青木は、警視庁に入る前に特命係にはめられたことを根に持つ、極度の警察嫌いでひねくれ者という役柄。浅利さんは4歳から劇団に所属し、子役としても活動していた芸歴の持ち主で、嫌味な性格の青木を完璧に演じています。

ブレない右京を中心に、まわりを取り巻く俳優陣との調和ができていて、それがもうワンダフルなんです。劇団出身俳優など演技力が確かな人たちを配置しているからこそ、隙のないドラマ作りへとつながっているのでしょう。脇を固めるキャラクターたちは画として見るとちょっと地味なんですが、実際にはとても重要なファクターとなっています。

バディがいるから冴える“杉下右京”の強烈キャラ

演技派俳優陣がそれぞれの持ち味を活かして、右京と交差する部分も見どころですが、さらに忘れちゃいけないのは、右京とバディを組む刑事。

1代目は「土曜ワイド劇場」時代から、「season7」までの長きにわたり右京の相棒となった亀山薫を演じた、寺脇康文さん。頭脳派の右京と違い、熱血漢で体から動く亀山。右京とは正反対のタイプだからこそ、ひとつの事件を多角的に解決できるというメリットがあったように思う組み合わせで、ドラマを盛り上げていました。

2代目は「season7」最終話から「season10」まで、相棒となった神戸尊役の及川光博さん。冷静に状況を分析するエリートという面では、右京と似ているものの、スパイという一面もあって難役だったかも。警視庁に異動後、警察庁長官官房付・警視として、現在も右京に力を貸す神戸役をまっとうし続け、切れ長の目で画面に麗しさを醸し出しているミッチーです。

3代目は「season11」から「season13」まで相棒となった、甲斐享役の成宮寛貴さん。右京のスカウトを受け特命係に配属されたのに、後に犯罪者に制裁を下す「ダークナイト事件」を起こし懲戒免職になった後味の悪いエンディングでした……。成宮さんは若者の心の揺れの象徴だったのか、影を抱える甲斐をやりきりました。その後、芸能界からも卒業したのは記憶に新しいですね。

4代目は「season14」から現在放送中の「season18」でもバディを組む、警視庁特命係・巡査の冠城亘役の反町隆史さん。もとは法務省のキャリア官僚の後、かねてから希望していた特命係へ異動した冠城。甘いマスクで捜査する姿は、女性ファン獲得に貢献しているかも?昔はアイドル俳優的な要素もあった反町さんですが、演技派揃いの『相棒』においてまったく浮かず、見事に実力派俳優へと遂げている事実を確認できるのではないでしょうか。

ドラマを支える優秀なスタッフがいて、役柄を徹底して演じられるキャストが揃う『相棒』。いまや国民的ドラマになった一番の理由は、杉下右京という強烈でいて、確固たるキャラクターの魅力が満載なこと。この軸が揺るがない限り、これからもわたしたちは『相棒』にドはまりしてしまうに違いありません。

【番組HP】
『相棒season18』 https://www.tv-asahi.co.jp/aibou/