コラムツッコミどころ満載!新星・安斉かれんが浜崎あゆみになりきる『M 愛すべき人がいて』のすごさ

こんにちは、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。Suits WOMANでテレビをテーマにした連載コラムを書いています。

今回は、土曜ナイトドラマ『M 愛すべき人がいて』(テレビ朝日系 土曜午後11:15・AbemaTVで全話独占配信)をご紹介します。

たっぷり濃い目の味付けがクセになる“90年代リバイバル”ドラマ

ドラマにハマると“アユ&マサ”に見えてくる安斉さん&三浦さん。 (C)テレビ朝日/AbemaTV,Inc.

現在放送中の『M 愛すべき人がいて』は、“歌姫・浜崎あゆみ”さんの誕生や出会いと別れを描いた小松成美さんの同名小説(幻冬舎文庫刊)を原作に、鈴木おさむさんが脚本を手がけた、アユ役を務める安斉かれんさん&名プロデューサーのマックス・マサ役を務める三浦翔平さんのダブル主演作です。

現役で活躍している人物をモデルにしたドラマとあって、始まるまでは「誰がアユの役をやるの?」「早く観てみたい」「まだ生きているのにドラマ化!?」「放送が楽しみだ」など、賛否両論を巻き起こしていました。

いざドラマが始まってみると、Twitterのトレンドランキングの上位にランキングし、テレビ朝日のアクセスランキングでは1位をキープするなど、すでにそのジェットコースター級の怒涛の展開やキャラクターのインパクトの強さで、多くの反響を呼び話題沸騰中。

そんな『M 愛すべき人がいて』のダブル主演のうちのひとり、安斉さんは、令和元年5月1日にデビューしたアーティスト。今回のドラマがスタートするまでは、公開される写真や動画がまるでCGのようだし、イベントに出演しても観客の前に姿を現さないしで、「ホントは実在しないんでしょ?」と “バーチャル説”まで流れていたミステリアスな存在でした。

実は安斉さんの楽曲プロモーションは、サブスクリプション音楽ストリーミングサービスで限定配信したのち、“8cmシングル”としてまた限定リリースされるなど、手法も凝っています。配信が主流の現在、特に90年代に多くのシェアを誇ったタテ長のケースに入ったCDの“8cmシングル”をあえて作るのも粋ですし、今回のドラマ公式グッズでも8cmぽい「シングルCD風付箋(税抜600円)」を販売して、郷愁を誘っています。

劇中ではTRF、globeなど90年代を彩ったヒット曲が、本人ではなく形を変えて弾き語りやレッスン曲、B.G.Mとして流れ、その頃に青春時代を送ったアラサーやアラフォーの心を鷲掴みに。若い世代には90年代の楽曲が新しく聴こえることもあって、「観ているとカラオケに行きたくなる」という人も続々。ハラハラドキドキしながらドラマを視聴し、思いのままに歌ってみるのも、いい“おうち時間”になります。

また、アユとマサが出会って運命が動きだすシーンが描かれたのち、度々登場する六本木のディスコ「velfine」は、かつて六本木に実在し大盛況だったディスコ「ヴェルファーレ」で、さらに大階段も再現。音楽だけではなく、映像としても、90年代の華やさが伝わるような舞台を整えてあるのも粋ですよね。

そして主演の安斉さんは、今回のドラマデビューでメディアに登場するようになったので、初めて「安斉かれん」という存在を認識した視聴者のみなさんも少なくないでしょう。安斉さんと三浦さんは、ドラマのスタート日に同局の『激レアさんを連れてきた。』(土曜午後10時10 分)に出演。安斉さんは初めてのバラエティー参加で緊張している様子ながらも、切れ味鋭いエピソードを披露し、ドラマよりもひと足早く地上波に姿を現して、神秘のベールを脱ぎ捨てたのでした。

そんな注目を集めている『M 愛すべき人がいて』ですが、一番視聴者に衝撃を与えているのは、“実に濃い”鈴木おさむさんの脚本と登場人物ではないでしょうか。

鈴木さんといえば、同局の『奪い愛、冬』(2017年)やAbemaTV『奪い愛、夏』(2019年)の脚本も手がけ、そのストーリーのドロドロ加減や振り切ったキャラ設定などを今作でも遺憾なく発揮。さらに80年代に人気の“オーバーだけれどわかりやすくてハマってしまう”大映テレビ作品を彷彿とさせる味付けが、令和のいまだからこそ、逆に新鮮に感じます。角川大映スタジオも制作に協力しているので、ドラマの味付けはこってりと濃い目に仕上がるのも必然なのでした。

第3話でアユとマサの恋は新たな展開に。アユ、がんばれ! (C)テレビ朝日/AbemaTV,Inc.

キャラもせりふも見逃せない!! 「愛の、どろ沼。」ながらシンデレラストーリー

眼帯が「ミカンに見える」人続出(筆者はおもちに見えた)! 激情秘書・礼香。  (C)テレビ朝日/AbemaTV,Inc.

濃い目の味付けが、ついクセになってしまう『M 愛すべき人がいて』。さらに否が応でもインパクト大で注目してしまう、登場人物を見ていきましょう。

同ドラマでもっともツッコミどころが満載だといえるのが、右目に眼帯姿のマサの秘書・姫野礼香役のフリーアナウンサー・田中みな実さん。彼女が登場するとあやしい音楽が流れ、マサにしなだれかかりながら、アユの話になると眼帯をしていない左目の瞳孔が開いて、常に興奮状態の礼香。

毎回、ブドウを一粒もぎりとって「私の目になってくれるって約束したもんねえ」とマサにせまる礼香の姿は、大映ドラマ『スチュワーデス物語』(TBS系 1983〜1984年)で片平なぎささんが、義手にはめた手袋を口で取り、元婚約者にせまる演出を思い出させます。さらに礼香は、眼帯をたまにはずして、「未来が見えるー!」と占い師のようなせりふを吐くことも。今後もどんな奇行をはたらくのか……もう目が離せません。

第2話から登場した、ニューヨークの鬼トレーナー・天馬まゆみ役の水野美紀さんも、クレイジーです。指導中のレッスンで、アユに「イノシシをやれるくらいのパンチを!」と檄を飛ばすシーンでは、たまらず爆笑してしまいました。ニューヨークで、イノシシ……それってアドリブなんだろうか。蝋燭の前で歌わせるって……これ、某演歌歌手の有名エピソードじゃないですか。こちらも濃厚なキャラクターと、せりふが気になって仕方がありません。

ほかにも、そうそうたる顔ぶれが脇を固めるのですが、実際にいま活躍中の5人組ダンス&ボーカルグループ・Da‐iCEの和田颯さんなども実在するアーティストをオマージュした役柄で出演していましたが、こういったサプライズ出演はファンの方もうれしいですよね。

そんななかで、パッと見たときにツボに入ったのは、音楽プロデューサー・輝楽天明役の新納慎也さん。きっとあのT.K.をモデルにしているのだと思うのですが……お笑い好きだからなのでしょうか、なぜか、お笑い芸人「ぺこぱ」の松陰寺太勇さんに見えてしまうのです。あぁ、ごめんなさい。

とはいえ、そんな輝楽プロデューサーを前に、「ぜってぇ負けねぇ」と闘志をみなぎらせる三浦さん演じるマサは、とにかくカッコいいんです。アユを見出したことを中谷社長に告げるシーンでは「アユを選んだのは俺じゃない。俺を選んだのも俺じゃない。神様です」とメンチを切るマサ。前事務所からアユを奪って「お前はもう自由だ!」と叫ぶマサ。土砂降りの雨の中「俺を信じろ!」と絶叫するマサ。あんなマサ、こんなマサ、次はいったいどんなマサ……? とワクワクします。

第2話では、ニューヨークで落ち込むアユがうっかり空に飛ばしたバルーンを突然現れたマサが見事なジャンピングで取り、チャペルで「一度掴んだものは意地でも離すな」と説きながらアユに手渡し、そしてアユの頭をなでるという、少女漫画のような世界も広がる『M 愛すべき人がいて』。アユとマサがいると空に虹が出ることもあるなど、これは実話がベースのファンタジーとしても楽しめる側面も。

でも、これだけ壮大なドラマが完成したのは、現実に浜崎さんの偉大な実績があってこそです。それに、ドラマの中でアユがマサによってスターになったのと同じように安斉さんが成長していく姿は、浜崎さんと同じシンデレラストーリーを予感させます。まさに、“安斉かれん=浜崎あゆみ”なのです。

5月2日放送の第3話では、大浜社長(高嶋政伸)が流川翔(白濱亜嵐)のプロデュースする4人組にアユを追加してデビューさせるとマサに告げますが、マサは役員の前でソロデビューさせると言い、売れなかったら会社を辞めると宣言……。次はいったいどんな展開になるのか、最後まで見逃せません!

野心に燃えるマサを演じる三浦さんはとにかくカッコいい! (C)テレビ朝日/AbemaTV,Inc

『M 愛すべき人がいて』https://www.tv-asahi.co.jp/m-ayumasa/

写真提供=テレビ朝日/AbemaTV,Inc.