コラム坊主で医師を伊藤英明が演じる、『ねんとな』の“熱き”ギャップ萌え

こんにちは、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。Suits WOMANでテレビをテーマにした連載コラムを書いています。

 寒い日は伊藤英明の熱い演技であったまる!?

今回は、現在放送中のドラマ『病室で念仏を唱えないでください』(TBS系・毎週金曜午後10:00)をご紹介します。

同作は、2012年から『ビッグコミック増刊号』(小学館)で連載中(既刊6巻)の、こやす珠世さんの同名コミックが原作のドラマ。医者であり僧侶の「僧医」である主人公・松本照円(伊藤英明)が、救命救急医として、患者の命と心を救うために奔走するヒューマンドラマとなっています。

冬ドラマは医療系が大混戦しているため、それぞれどのようなアプローチで医療を描いているかがポイント。そういう意味でいうと、この『病室で念仏を唱えないでください』(略して、『ねんとな』)は、そもそも主人公のキャラクターが特殊。

医者であり、僧侶!『病院で念仏を唱えないでください』(小学館より発売中)。(c)こやす珠世/小学館

実在する職種とはいえ、「僧医」の存在を知っていた視聴者はそれほど多くはないでしょう。事実、私は知りませんでしたよ。僧侶というと、一般的にはお葬式を連想してしまい、ドラマの中でも病院内を僧侶姿で歩く主人公は「縁起ワルッ!」と嫌がられるようなシーンもあります。ただ、それだけインパクトの強い職業ともいえるわけで、そこに着目した原作の世界観が見事であることがまず、同ドラマの勝点といえそう。

伊藤英明の僧侶姿……これも萌えポイントのひとつ!

さらに、主人公の松本を取り巻く三宅涼子(中谷美紀)、児嶋眞白(松本穂香)、濱田達哉(ムロツヨシ)、田中玲一(GENERATIONS from EXILE TRIBEの片寄涼太)、澁沢和歌子(余貴美子)ら、若手とベテラン出演者との掛け合いや、救急医と専門医の対決も見られるなど、医療ドラマではあまり描かれなかった視点も見どころです。

出演者といえば、第1話のみで早々に“出演自粛”をしたのは、元出演者の唐田えりかさん。そうです、いま違う意味でブレイクをしている、東出昌大さんとの報道で話題の彼女です。病棟クラーク役として、第1話では主役と絡むシーンが多く出てきました。

いろんな意味で注目を集めている『ねんとな』は、先日放送された第2話も視聴率2ケタをキープするなど、いまのところ好調です。第2話では、緊急オペをする松本の後ろにまわり、手伝うでもなく、その手術の仕方にグチグチ注意をしてくるエリート心臓血管外科医の濱田に、筆者は観ていてイライラしました。

松本(伊藤英明)と濱田(ムロツヨシ)、この2人の存在がドラマを面白くしてくれそうです。

最終的に、松本から「いちいち小姑みたいにうるせえ!」と一喝された濱田は、その後自分の技術力の高さを見せつけるために、オペを手伝うという流れに。松本を演じる伊藤さん、濱田を演じるムロさんともに、本当にいがみ合っているように見えました。

20代の頃から主役を張っていた伊藤さんと、確かな演技力がありながらもコツコツと舞台などの下積みを経て30代後半で主演作ができたムロさん。対照的なふたりながら、劇中ではどちらも引けを取らない、迫力のある演技を披露。『ねんとな』の制作発表会見では、ムロさんがアルバイトをしている時代に、すでに伊藤さんと中谷さんは映画やドラマで活躍していて、その姿をずっと“見ている側”だったことを告白していたムロさん。それがいまや“共演者でライバルの役”だなんて、不遇の時代から比べると、大出世を遂げています。

それに、「ケンカするほど仲がいい」という言葉もありますが、いがみ合うほど考え方に違いがあるものの本音でぶつかりあえる関係性だからこそ、理解し合えたときは強力なバディとしてタッグを組むようになる展開もあるかもしれませんよね。今後も松本と濱田の“救急医と専門医”の対決は、ドラマを盛り上げる一翼になるはず。伊藤さん、中谷さん、ムロさんは同世代ということもあってか、緩急のついた芝居を見せて、ドラマに安定感を出しています。

そしてなんといっても、異色のキャラクターといえる主人公が見せる“ギャップ”が、このドラマの一番の魅力ではないでしょうか。そもそも僧侶と医師というふたつの顔があることに加えて、どちらの職業も“生と死”に向き合うシリアスさを感じさせがちなところですが、主人公の松本はちょいちょい煩悩が過ぎる描写が出てきて、肩すかしをくらいます。

僧侶なのに人間的……いや俗物的!

「あれ? 僧侶なのに、そんなに俗世にまみれてていいの?」と思うような松本の口の悪さだったり、精進料理ではなくお肉も食べたり、ちょっとエッチな雑誌を職場で隠し持っていたり。そして松本がプールで泳ぐシーンがいまのところ毎話出てきていますが、それはけっして伊藤英明さんのムチムチの肉体美を見せつけるためではありません。緊急時の人助けに備えて鍛えているのですが、プールサイドの水着のおねえさんを見て、ついニンマリして煩悩を必死でふりはらうという、人間味あふれるキャラクターが描かれています。

「僧医」だからといって、常に崇高な視点で生と死を語るお説教くさいキャラクターとして描かれる主人公よりも、どこか身近に感じる人柄の方が、共感しやすいですよね。だからこそ、観る側も力を入れすぎずに、適度に緊迫しながらときどきリラックスするという“ギャップ”を楽しみながら、視聴できるのでしょう。

初回放送では「はあはあ」と息を切らしながら、心臓が動かなくなった患者に一生懸命心臓マッサージをする松本が描かれ、その姿は医師というよりも、なんだかアスリートのようにも感じました。松本から流れ落ちる汗が、患者の頰に涙のように落ちる描写があり、あえて少しゆっくりと、まるで患者が流した涙のようにも見える演出で印象的だったんです。

手がけた患者が必ず助かるわけではなかったり、僧侶として亡くなった方のかたわらで松本が念仏を唱えるシーンもあるなど、“救える命と救えない命”の両方をしっかりと見せているのも同ドラマの特徴。過去のある出来事を背負った松本の心の動きも、今後どうなっていくのか、気になるところです。

実は主役の伊藤さん、TBSドラマ主演は2007年放送の『孤独の賭け〜愛しき人よ〜』以来、今作が12年ぶり。前回は、水商売から出世を遂げたお金と欲にまみれた実力者役を演じていましたが、12年の時を経て、今回は煩悩をふりはらい命を見つめる「僧医」役を務めるというのも興味深いですね。色恋から生死……なんとも時の流れを感じます。

手術着を着ていても、鍛え抜かれたボディーがわかります。

今やすっかり“熱い男”でおなじみの伊藤さんですが、やっぱり『海猿』シリーズの主演がそうさせている部分もあるような気がします。大ヒットした「海猿」シリーズでは、海上保安庁の潜水士(海猿)の役を演じ、エネルギッシュに熱い演技を披露していました。『ねんとな』でも役のために丸刈りにして、熱い使命感に燃える主人公を演じています。もう、松岡修造さんが日本にいない時は、伊藤さんがいれば大丈夫!というほどの“熱い男”キャラ確定です。

そんな伊藤さん演じる松本が、これからドラマの中でどんな筋肉美を見せて……いや、どんな熱い演技を見せてくれるのか、引き続き視聴していきたいと思います。

『病室で念仏を唱えないでください』(こやす珠世/小学館)1~6巻発売中。

『病室で念仏を唱えないでください』https://www.tbs.co.jp/nembutsu_tbs/
※写真提供=TBS