コラム女は“シジュー”から!『その女、ジルバ』の池脇千鶴たちが教えてくれる人生の楽しみ方

こんにちは、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。Suits womanでテレビをテーマにした連載コラムを書いています。

今回は、『その女、ジルバ』(東海テレビ・フジテレビ系 毎週土曜 午後11時40分)をご紹介します。

「人生は楽しまなくちゃ!」と思わせる主人公の朗らかさ

主人公・笛吹新(うすいあらた)は源氏名「アララ」となり明るさを取り戻す。 ©東海テレビ

現在放送中の池脇千鶴さん主演の『その女、ジルバ』は、「第23回手塚治虫文化賞マンガ大賞」を受賞している、有間しのぶさんの同名コミック(小学館「ビッグコミックス」刊)が原作、そして「Dr.コトー診療所」シリーズなどを手掛けた吉田紀子さんの脚本による連続ドラマです。

池脇さん演じる主人公・笛吹新(うすいあらた)は、結婚直前で婚約者に裏切られ破談となり、さらに本社勤務から「姥捨て場」と呼ばれる倉庫勤務に異動させられるという、夢も貯金も恋人もいない40歳の女性。

うまくいかない現状や老後に不安を抱えながら、偶然「ホステス募集 ただし40歳以上!」の張り紙を見つけ、思い切ってBAR「OLD JACK&ROSE」の扉を開くと、そこにいたのは、自称50代から80代までの元気な高齢ホステスたち。そう、そこは超高齢熟女BARだったのです。

終戦直後から力強くポジティブに生きてきた彼女たちの姿を見て、昼と夜、二足のワラジで働くことになったホステス“アララ”こと新。だんだんと生命力が増す新に、BARに来たお客さんや職場の同僚たちも感化されて、みんなが輝いてくるという、ミラクルヒューマンストーリーなのです。

池脇さんの“リアルすぎる”シジュー(四十)の主人公の姿は、すでに巷でもSNSでも話題沸騰。ドラマが始まる前に番宣で出演したバラエティ番組では、「……なんか、老けた?」という声が視聴者側からつぶやかれるなど、いつものチャーミングな姿とは少し違う印象を視聴者に与えていた池脇さん。

ですが、いざドラマ『その女、ジルバ』が始まると、「え、これって、池脇千鶴!?」「誰だかわからなかった!」という声も多々あるなか、“伝説のママ・ジルバ役”と“笛吹新役”の一人二役を演じる池脇さんの、その女優魂が絶賛されています。劇中で新が女性としての自信を取り戻していくのと同時に、以前は“しょぼくれたシジュー女”が、どんどん「友達になりたい!」と思わせるおおらかさとパワフルさをあわせもつ“カッコいいシジュー女”に大変身。

よくある“どこからどう見ても美人なのにモテない役”をする女優よりも、“見た目からリアルなシジュー女”を体現する池脇さんの、役作りのすごさに唸るばかり。新の肉付きのいいフォルムはそのままに、まるで別人のようなオーラをまとわせ、それを画面越しにまで伝わせてくるなんて、演技派の池脇さんだからこそできる技。さらに観ているこちら側も、新と同じように、ドラマの回を増すごとに明日への力がみなぎってくるんですから、不思議なものです。

思い返せば池脇さんは1999年の映画『大阪物語』で売れない漫才師夫婦の娘役を演じ、映画デビュー作から新人賞を総なめにした力量の持ち主。筆者はとくに、2003年の映画『ジョゼと虎と魚たち』での車椅子生活を送る役や、2014年の映画『そこのみにて光輝く』での問題を抱える家族を持つ役、近年では2019年の映画『半世界』での炭焼き職人の妻役などが印象的でした。

どの役にも通じているのは、今の世を「必死に生きている女性」だということ。そこにいかにも演技をしている感じや、ウソが見えると、視聴者の心はつかめません。その点『その女、ジルバ』においても、2021年の今も続くコロナ禍において、池脇さんが得意とする「リアリティのある」等身大のシジュー女性像が、見事に発揮されているのです。

そして、池脇さんのほか、味わい深いキャストがたくさん登場。映画『ジョゼと虎と魚たち』以来、約17年ぶりの共演となる、新の職場である倉庫のグループリーダー・浜田スミレ役を演じる、江口のりこさん他にも迫ってみましょう!

「OLD JACK&ROSE」 マスターの蛇ノ目幸吉(品川徹)と“チーママ”こと大田原真知(中尾ミエ)。 ©東海テレビ

シジュー女の恋愛はまだ花盛り(のはず)!

新の前に突然現れたイケメン・白浜俊輔(竹財輝之助)の正体は? ©東海テレビ

池脇千鶴さん主演の連続ドラマ『その女、ジルバ』では、主人公の笛吹新(池脇)が勤める倉庫で仲良くなった、村木みか(真飛聖)、浜田スミレ(江口のりこ)が織りなす“シジュー3人娘”の友情にも、ほっこりさせられます。

第5話でみかが会社を辞め、島根の実家にいる母のもとへ戻る決断をする様子は、しんみりしながらもその潔さを応援したくなるエピソードでした。実際に、都会で暮らしながらも思い描いていたように進まず、一大決心をして新たな道を選択する女性は少なくありません。劇中では、彼女たちの友情を通して「わかる、わかるよ」と何度もうなずいて共感してしまうような場面がたくさんありました。

先週放送された第6話では、いつものように屋上のベンチに座った新とスミレが、お昼休憩で食事をする際、みかがふたりに送った縁結びの神さま・出雲大社のお守りのことを話す場面も。「お参りに行くと結婚できるんだって」と話す新に、「肌身離さず持ってる」と言って、首からネックレスのように身につけた縁結びのお守りを見せるスミレの姿が。

出雲大社のような縁結びの神社に、恋愛成就やすてきな結婚のお願いをしにお参りに行ったことのある女性もたくさんいるのではないでしょうか。筆者も独身時代、全国の縁結び神社にお参りに行き、婚活では1,000人の男性と出会いました。出雲大社では、神在月にひとりで東京から島根へ行き、しっかりとお参りやその他縁起担ぎをしてきたからか、その後無地に結婚できたのはたくさんの神さまのおかげかもしれません。

劇中でスミレは、奇跡が起こるというBAR「OLD JACK&ROSE」のクリスマスパーティのマジック&縁結びのお守りの効果なのか、ハッピークリスマスを迎えました。「ご利益があったみたい」と新に話すスミレは、すっかり恋する女の顔になっていて微笑ましい限り。

そしてパーティの後、ジルバに贈ったシルバーのブレスレットに刻まれた「Kokichi」の名を発見する新。「OLD JACK&ROSE」のマスター・蛇ノ目幸吉(品川徹)とジルバのロマンスがあったらしく、13歳年上のジルバへの恋心をずっと抱き続けている様子がなんだか切ないのです。ジルバはいろいろなことを背負って生きていたからなんともいえませんが、現代で13歳ぐらいの年の差なんてどうってことないですよね。我が家も夫は13歳年下なので、「ある、ある」と思いながらドラマを観ていました。

次の展開が気になる『その女、ジルバ』の2月20日放送第7話は、大晦日にBAR「OLD JACK&ROSE」で大掃除をしていた新の前に、クリスマスの夜、閉店間際に店を訪れて新に花束を渡して立ち去ったイケメン・白浜俊輔(竹財輝之助)が出現。白浜に「ジルバは死んだよ…」と告げる幸吉。ジルバの写真に手を合わせた後、白浜は語り始めた……。次回も必見です!

こんなシジューのアララに癒されたい! 池脇千鶴の役作りたるや恐るべし。 ©東海テレビ

『その女、ジルバ』
https://www.tokai-tv.com/jitterbug/#jitterbug