コラム門脇麦×森山直太朗が織り成すドラマ『うきわ―友達以上、不倫未満―』が醸す哀愁

こんにちは、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。Suits womanでテレビをテーマにした連載コラムを書いています。

今回は、連続ドラマ『うきわ ―友達以上、不倫未満―』(テレビ東京系 毎週月曜 午後11時6分)をご紹介します。

抑えきれない想いの行方…不倫に走るトリガーはどこにある

劇中でキーとなるベランダの非常壁の前に佇む二葉一(森山直太朗)。(c)野村宗弘・小学館/「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会

『うきわ ―友達以上、不倫未満―』は、2012年から2014年にコミック配信サイト「やわらかスピリッツ」(小学館)で連載していた、野村宗弘さんの『うきわ』(既刊3巻)を初めて映像化した、連続ドラマです(現在は続編『うきわ、と風鈴。』を小学館「週刊ビッグコミックスピリッツ」で連載中)。

社宅住まいの主婦・中山麻衣子(門脇麦)と、隣室に住む夫の上司・二葉一(森山直太朗)は、ベランダの壁一枚を隔てて交流を深めていくなかで、お互いに配偶者に浮気されているという共通点を知ります。次第に仲良くなっていくふたりは、朝のゴミ出しを一緒にしたり密会したりと惹かれ合っていくなか、気持ちが抑えきれなくなってきた麻衣子とは対照的に、ブレーキをかける二葉さん。

うきわで浮いているようで救われていた麻衣子だけれど……。 (c)野村宗弘/小学館

“緊急時には、この壁を突きやぶって隣りへお逃げ下さい”と書かれたベランダの非常壁が、理性を保つ防御壁となるのか、突き破ってしまいたい障害になるのかも見どころのひとつといえる今作。先週放送された第5話では、麻衣子の胸に募っていた二葉さんへの想いが走り出してしまい、ベランダで再会した夜、麻衣子はなんとこの非常壁を越えてしまったのです。うわーっ!! ついにその日が来てしまったか…と、ドラマを観ていて今後の展開が心配になったのは、わたしだけではないはず!

非常壁を乗り越えた麻衣子と二葉さんの距離感にゴクリ。野村さんの原作の吸引力大!  (c)野村宗弘/小学館

不倫ドラマが大混戦している昨今、それぞれどのようなアプローチで不倫について描いているかがポイントでもありますが、今作はそもそも原作が秀逸。原作者の野村さんが描くイラストのタッチはほっこりとさせてくれるんだけれども、『うきわ』の世界はじりじりと胸を締め付けてくるような陰りも見え隠れして、手放しでリラックスできない一面もあり、どうなっていくのか見逃せないところも惹きつけられる魅力のひとつといえます。

ドラマは原作に寄り添いながらも、イマジネーションを超えて、とくに麻衣子の心の葛藤を表現した映像化が見事。脚本も優れていて、不倫をテーマにしているものの、ドロドロしていないんですよね。でも、博愛主義万歳というお気楽なものではなく、ピリリとしたスパイスもしっかり効いている絶妙さがあって、そこが他の不倫を扱うドラマとは異なる点だといえるでしょう。

第5話では、麻衣子が実際にベランダの非常壁を越えてしまうまでの、二葉さんへの大いなる心の揺れ動きが、“うきわ”ではなく重い“タイヤ”を引きずっていたロープをぶち切って非常壁へと突っ走り突き破ってしまう、という場面になっていました。

軽やかなうきわに揺られて海にたゆたっていた時期は過ぎ、硬い地面を自らの強い意志で蹴りながら、頑丈なタイヤのロープさえ切り裂いてしまうほどの真っ直ぐな想いは、果たして今後整理がつくものなのか? ドラマだからこそ味わえるその世界観に、見入ってしまうのです。

非常壁を突き破る前の中山麻衣子(門脇麦)。 (c)野村宗弘・小学館/「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会

危うい男女を体現する役者が織り成すビターな恋

麻衣子はこれから夫、そして二葉さんとの関係をどうしていくのか? (c)野村宗弘・小学館/「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会

野村宗弘さんの『うきわ』が原作となる、連続ドラマ『うきわ ―友達以上、不倫未満―』。原作に加えて、ドラマにまつわるクリエーターの方々が作り出すものが優れているうえ、今作の世界を表現するのに欠かせない役者のみなさんの演技が光ります。

麻衣子役を演じる主演の門脇麦さん、二葉役を演じる森山直太朗さんは、配偶者の浮気に悩まされながらも、自分自身も他の人へ心が揺れ動くという難役。麻衣子と二葉さんの場面は、これまでほのぼのとさせてくれる安心感があったものの、今後はどうなっていくのか、雲行きがあやしいと言わざるを得ません。

門脇さんは、2011年にデビュー後、2014年公開の映画『愛の渦』の体当たりの演技で一躍脚光を浴び、着実に実績を積んでいる若手実力派です。近年では大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK総合 2020年~2021年放送)で、健気なヒロイン役を演じていたのも記憶に新しいところですよね。

森山さんは、2002年10月にシンガーソングライターとしてメジャーデビューし、来年は20周年というアニバーサリイヤーを迎えます。俳優としては、昨年『心の傷を癒すということ』や連続テレビ小説『エール』(ともにNHK総合 2020年放送)と、森山さんだからこそ放つ存在感でドラマの世界を彩っていました。

陽キャな麻衣子の夫・たっくん(大東駿介)も心境に変化が…。 (c)野村宗弘・小学館/「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会

そんなカリスマ性のある門脇さんと森山さんはもちろん、夫婦の心がすれ違うなかで「陶芸教室」と偽りながら不倫してきた二葉さんの妻・聖役を演じる西田尚美さん、その聖と不倫関係でありながら、ピュアな恋心を抱いて憂いのある色気を見せる田宮悠役の田中樹(SixTONES)さん、麻衣子を欺きつつもあっけらかんと不倫する「たっくん」こと麻衣子の夫・拓也役を演じる大東駿介さん、その拓也と不倫関係ながら別に独身の彼氏もいる福田歩役を演じる蓮佛美沙子さんなど、演技派のキャストがズラリ揃います。

さらに、動画配信サービス「Paravi」のオリジナルストーリーも配信中。どこか達観している麻衣子の同僚・佐々木誠役を演じる高橋文哉さんと、鋭くまわりを観察している二葉さんの部下・愛宕梨沙役を演じる小西桜子さんが、マッチングアプリを通じて出会うことで巻き起こるラブコメディを展開しているので、要チェックです。

次回、気になる『うきわ ―友達以上、不倫未満―』の9月13日放送の第6話は、ベランダの壁をついに越えた麻衣子が二葉さんに気持ちを伝えようとした矢先、二葉さんの妻・聖が帰宅。逃げ惑うふたりに、予想外のことが! また、会社の納涼祭では、麻衣子の夫・たっくんの不倫相手・福田さんと麻衣子が出会ってしまい、女子トイレで修羅場が…! これまでは嵐の前の静けさだったのか!? どうなっちゃうんでしょう、次回も見逃せませんね!

福田歩と麻衣子がバトルに!? (c)野村宗弘・小学館/「うきわ ―友達以上、不倫未満―」製作委員会

『うきわ ―友達以上、不倫未満―』
https://www.tv-tokyo.co.jp/ukiwa/

ドラマ公式ツイッター
https://twitter.com/tx_ukiwa

『 うきわ ―友達以上、不倫未満―』1巻 650円/野村宗弘(著) 小学館(刊)Amazonで見る

かわむらあみりのテレビウォッチング
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