コラム高齢化社会だからこそじわじわ染み入る!?『ポツンと一軒家』の味わい深さ

こんにちは、テレビウォッチャーで、ライター・エディター・コラムニストのかわむらあみりです。Suits WOMANでテレビをテーマにした連載コラムを書いています。

今回は、テレビ朝日系のドキュメンタリー&バラエティー『ポツンと一軒家』(日曜夜7:58~・ABCテレビ制作)をご紹介します。

的確ながら適度にゆる〜い所ジョージのMC力と安定感

写真左から高橋ひかる、林修、所ジョージ、中村橋之助がポツンと一軒家の住人を考察。 (c)ABCテレビ

『ポツンと一軒家』は、2017年よりオンエアされていた特番を経て、2018年10月からレギュラー化された人気番組。衛星写真だけを手がかりに、日本各地の人里離れた場所に、なぜだかポツンと存在する一軒家を探し、そこに住む人物の人生に迫ります。衛星写真から住人を考察していくところは、ちょっとした謎解き気分も味わえて、なんとも面白いんですよね。

3月8日の放送回では、MCの所ジョージさんとパネリストの林修さんに加え、ゲストに中村橋之助さん、高橋ひかるさんを迎えて展開。岡山県と鳥取県との県境に近い山奥にあるポツンと一軒家を衛星写真から発見し、実際に山沿いにある最寄りの集落から、捜索がスタート。急傾斜のヘアピンカーブが続く細い山道の先には、多いときには弟子が1,000人もいたという著名な彫刻家の男性の家族が3世代で住んでいました。

毎回、クローズアップする一軒家は変わるものの、スタジオで的確なコメントを飛ばす所さんの安定感はスゴイです。同局の“家系”ドキュメンタリー&バラエティー『大改造!!劇的ビフォーアフター』でもMCを務める所さんは、ちょっとしたハウジングアドバイザーにもなれそうな“家のこと客観的にわかっています”オーラもバツグン。一方、サポート役となる林さんの知識力が活かされる場面はそんなに多くはないものの、“東大出身の林先生”としての信頼感もあり、出ているだけでも番組の説得力が増しているように思います。

このおふたりに加えて、毎回、俳優さんやタレントさんなどのゲストの方が参加することで華やかさがアップ。さらに、某国民的アニメのナレーションでお茶の間をほのぼのとさせている、キートン山田さんが『ポツンと一軒家』のナレーションを担当していることも番組の“あったかい雰囲気”に貢献していて、ポイントが高い要素だと感じています。

そんな所さんと林さん、キートン山田さんに、ポツンと一軒家の住人……といった、一見すごく「地味」な面々が織りなす同番組。とはいえ、派手さがないぶん、画面から放たれるゆる〜い雰囲気と清潔感がほどよく、家族で安心して観ることができる上質なドキュメンタリーだと実感しています。

それに、ポツンと“集合住宅”ではなくて、ポツンと“一軒家”というところもポイントですよね。たとえば、前述した岡山県の“ポツンと一軒家”では、彫刻家男性の18歳年下妻が長年抱いていた「小さいときから借家住まいで、いつか一戸建てに住みたい」という理想を叶えるべく、ご主人が自分で家をつくっちゃうというハイパワーぶりを見せつけていました。

昔、歌手の小坂明子さんも「あなた」(1973年発売)という歌で、「もしも〜私が〜家を建てたなら〜」と歌っていましたけど(え? 古すぎて知らないですって??)、やっぱり「いつか憧れのマイホーム!」という夢のようなものを一軒家に抱いている人も少なくないのかもしれません。

 筆者もいまちょうど家探しをしていたので、“どこで・だれが・どんな思いでその家に住んでいるのか”をまじまじと鑑賞してしまいます。番組では、住人の方の“人生”や“家族”のことを深堀りしていきますが、それに応じて、自分自身の人生や家族への思いを馳せることにもつながり、なんだかホッコリしてしまうのは、筆者だけではないでしょう。だからこそ、同番組が高視聴率をマークしているのも納得できるんです。

地方出身者の心を掴む、“ポツンと一軒家”の人々

林さんがときどき博学さをブッこむけれど、所さんにすぐ却下される様子も面白いところ。 (c)ABCテレビ

いつの時代も若者は都会に行きたがるものですが、山奥などの僻地に暮らすのはだいたいがその家を守ろうとする年配の方や高齢者の方。決して便利な場所ではなく、人里離れた場所にポツンと建つ一軒家に迫ることで、そこに住まう人々の「人生」が浮き彫りになっていきます。なぜその場所に?どうして?、と。そこにはドラマが必ずあるのです。

ちなみに、総務省統計局が発表している65歳以上の高齢者の人口は、令和元年ですでに過去最多を記録しているんです。総人口に占める割合は28.4パーセント、日本の高齢者人口の割合は、世界で最高(201の国・地域中)となっています。現実に日本では少子化も進んでおり、こうして高齢化社会となっていっているのです。なおさら、『ポツンと一軒家』のような番組がリアルに視聴者の心に響いてくるんですね。

いまの20代ぐらいまでの人たちは、テレビよりもSNSを身近に感じていたり、動画配信サービスにハマっていたりする人も多く、依然としてテレビを観るのは年齢層が高い傾向があります。そんな年齢層にも、『ポツンと一軒家』の番組趣旨はピタリとマッチしていて、視聴者の心をつかんではなさないワケです。

でも働き盛りの一人暮らしの人も、番組を観ると、故郷に住む両親のことを思い浮かべることが多いのではないでしょうか。進学や就職などの理由で故郷を離れて暮らす一人暮らしの人は、『ポツンと一軒家』を観ると自分の親のことを思い出して、ちょっぴりおセンチになってしまうかもしれません。「田舎」を持たない都会出身の人たちには、仮想「田舎の家族」を提供している面もあります。

お正月など、何かのタイミングでたまに帰る実家で、気づくと年老いていっている両親を見て、年月を感じることもあるでしょう。そんな気付きを、番組を通して感じることがあります。

『ポツンと一軒家』に登場するおじいちゃんやおばあちゃんを観て、自分自身も年を重ねたら「こんなところに住んでみるのもいいかも」とか、「あんなふうに家族を大事にしながら過ごせたらいいな」とか、少子高齢化社会の未来の自分を想像してしまいます。

次回、3月15日放送の『ポツンと一軒家』は、予告映像で「わはははははっ、いいですねえ!」と楽しげな男性ふたりが、山奥の中の手作りブランコと思われる遊具で遊ぶ様子が流れました。いったい、なんの目的でブランコをつくったのか!? 山奥にどういう理由で住んでいるのか、次回の放送にも注目したいと思います!

『ポツンと一軒家』 https://www.asahi.co.jp/potsunto/
写真提供=(c)ABCテレビ